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1万2000人の地元若者のデータ分析…金満とは無縁のR・ソシエダ、独自すぎる“持続可能なチーム強化策”とは?
posted2021/12/23 17:00
text by
横井伸幸Nobuyuki Yokoi
photograph by
Getty Images
ビッグデータの活用に関してスペインは遅れをとる
今年の6月までバルセロナのデータ分析部門を率い、現在はアメリカの企業でスポーツデータの分析に携わるハビエル・フェルナンデスによると、ビッグデータの活用に関してスペインのラ・リーガは、概してプレミアリーグやブンデスリーガに遅れをとっている。
そればかりか――。
「データ分析に力を入れる他国のクラブはここ数カ月で随分増えているので、数年後には大きな差がついてしまうかもしれない」
今年の秋の時点で、データ分析チームを持つスペインのクラブは、バルサ、セビージャ、R・ソシエダ、A・ビルバオ、カディス、ベティス、マジョルカ、レバンテ、そして2部以下ではラスパルマス、デポルティーボ、エイバルぐらい。
R・マドリーやA・マドリーには、少なくとも外部に知られている専門チームはない。
フェルナンデスは言葉を続ける。
「経験者を1人雇い、仕事をしてもらうというのがスペインの典型的なやり方だ。最初の一歩としては申し分ない。しかし、データを集めるだけでなく試合に活かすために、また、そうするためにどれだけの人を揃えなければいけないかを確かめるためには、確かな戦略をもって投資する必要がある」
セビージャはチーム強化にデータを有効活用
データ分析は魔法の杖ではない。
間違いなく勝率5割増しというわけではないので、お金と時間(データが有用なものと考える文化を組織の内部で育むための)を費やすことに二の足を踏むクラブがあるのも、不思議ではない。
「データ分析は、1シーズンの勝点が3~5ほど増える決定的要因になり得る。順位争いが拮抗していた場合、その勝点のおかげで優勝できるかもしれないし、CL出場権獲得や残留が叶うかもしれない」
フェルナンデスは、そう説くけれど……。
チーム強化におけるデータ活用には、客観的な有効性が感じられる実践例がある。
その1つがセビージャだ。2年前にデータアナリスト、数学者、統計学者、物理学者、システムエンジニアからなる部署を新設。独自のアルゴリズムを用いて監督のスタイルにぴったりはまる選手を世界中から探し出し、絞り込み、獲得するようになっている。
そうした努力が実り、R・マドリー、バルサ、A・マドリーに次ぐ4番手となりつつあり、2019-20シーズンのEL優勝など欧州カップ戦でも成果をあげている。