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“リアル二刀流”ドラフト候補・矢澤宏太(日体大3年)監督&コーチに聞いた「投手と野手、どっちに進むべき?」
text by
高木遊Yu Takagi
photograph byYu Takagi
posted2021/12/24 06:00
大学野球界の二刀流で注目を集める日体大・矢澤宏太。侍ジャパン代表候補合宿でも、その存在感は光っていた
まず指揮を執る古城隆利監督に見解を問う。
「僕は投手ですね。下級生の時は主に外野手として出場していて当時から既に欠かせない野手でした。でも左腕で最速150キロを投げられて完投能力もある。身長は高くない(173センチ)ですが、(リリースで)あれだけ上から叩ける投手はなかなかいません」
ただその前に「どちらかと言えばですが」という言葉を付け加える。「体の使い方が上手だからバットのヘッドを使ってカーンっと打球を飛ばせます」と打撃も高く評価しており、2022年も投打二刀流での起用を想定している。
元中日・辻コーチは?
投手指導を一任され松本航(西武)らを多くの好投手を育ててきた辻孟彦コーチ(元中日)も二刀流挑戦をプッシュしている。
「4年生になっても矢澤を投手としても打者としても出したいと思っています。彼にしかできない様々な可能性がありますから」
そう話した上で、「もしプロに入って投手をやらないのだとしたらもったいない」と、投手・矢澤の魅力について力を込める。
「あのキレのスライダーはそう簡単に投げられるものじゃありませんし、すべての変化球で腕が振れて、決め球にもなるし、ボールが先行した時にカウントを整える球にもできる。この冬は、まだ日によってムラがあるストレートの精度を磨こうと話しています」
大学2年時までは、首都大学リーグで野手として23試合に出場し24安打を打っていた一方で、投手としては3試合8イニングのみの登板だった(2年春はリーグ戦中止、2年秋はリーグ戦5試合制の開催)。だが、これは計画通りだったと矢澤自身が振り返る。
「下級生時は体作りや投手としての基礎の部分をしっかりやって、3年生から本格的に投げ始めるという計画で進んでいたので、ある程度計画通りにここまで来られています」
あくまで投手としての計画をしっかりと進め、野手としての練習は先日の合宿初日と同じく投手としてのメニューを終えてから打撃練習に参加する程度。野手として出場するリーグ戦の前日でもウェイトトレーニングをみっちりと行い、目の前の試合だけでなく将来を見据えて練習メニューを組んでいた。
3年時からは本格的に投打両方での起用が主となり、成績は3年春こそ3勝2敗(防御率0.90)の一方で打率.182と苦しんだが、秋は3勝2敗(防御率2.00、3完封)、打率.300と投打両面で結果を残している。