酒の肴に野球の記録BACK NUMBER
「高校野球のトーナメントっていろんな歪みがある」 慶應義塾・森林監督48歳が語る《神奈川でリーグ戦を推進する理由》
text by
広尾晃Kou Hiroo
photograph byKou Hiroo
posted2021/12/05 17:03
慶應義塾高校・森林貴彦監督の言葉からは先進的な高校野球の空気を感じた
「昨年夏、コロナ禍で甲子園が中止になり、県大会の代わりに3年生たちの引退試合を行なったことが母体になっています。球場を取ってあげて、ガチンコの試合をさせてあげようということだったのですが、各校の指導者と話をしているうちに7校ほどの県下の高校と接点ができた。リーグ戦を考えたときに、まずその7校にお声がけをしました。
Liga Agresivaの資料を共有して、オンラインで説明会を実施しました。いろいろと問題はあるとは思いますが、スタートしないことには面白くないのでとりあえずやってみようと。そして高校野球ってやっぱり楽しいね、ということを共有したい。
その後、賛同者が増えて最終的には15校になったんですが、コロナ禍でスタートが遅れてしまい、リーグ戦を組むこともできませんでしたが、とりあえず2カ月でやってみて。その結果を受けて、反省会をして、来年、本格的に始動しようと考えています」
リーグ戦の呼びかけは指導者が一歩踏み出すきっかけに
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Liga Agresivaに参加した、県立川崎北高校の川村太志監督はこのように語っている。
「森林先生のお話を伺い、とてもワクワクする企画だと思い参加させていただきたいと思いました。他校との交流を通して、高校野球生活の充実はもちろん、次のステージをしっかり意識させることができると思いました」
同じく横浜市立桜丘高校の泉田浩道監督も、このように期待を寄せている。
「この話を聞いた時は『いよいよだな!』という気持ちになりました。やはり一番は『背番号をつけて試合ができること』だと考えています。以前より、この秋の練習ゲームにもっと緊張感や目標があればさらに選手達の成長につながるのでは?と考えていました。また、一発勝負のトーナメントとは違う形式で試合ができることも、選手達の考え方の幅を広げてくれる良い機会になると非常に楽しみにしています」と期待を寄せた。
森林監督の問題意識は、神奈川県の多くの指導者が共有するに至ったのだ。
筆者は全国に広がったLiga Agresivaの多くの指導者に話を聞いた。「このままではいけない」という問題意識を抱いた人がたくさんいた。そういう指導者にとっては、リーグ戦の呼びかけは一歩踏み出すきっかけになったのだと思う。