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シェフチェンコは本物、フリットはレプリカ、ジダンはなし…ビッグクラブのミュージアムに見る《バロンドールの価値》とは? 

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posted2021/11/11 17:00

シェフチェンコは本物、フリットはレプリカ、ジダンはなし…ビッグクラブのミュージアムに見る《バロンドールの価値》とは?<Number Web> photograph by L’Équipe

6選手分、8つのバロンドールトロフィーが展示されているACミランのミュージアム。本物はシェフチェンコとファンバステンのものだけ

 もちろんトロフィーも、ミュージアムに飾られなかった。だが、ビッグクラブにとって、獲得したタイトルの展示が重要なコミュニケーション手段のひとつになるにつれ、トロフィーをできるかぎり魅力的に飾ろうとするようになる。プラド美術館のあるディレクターはかつてこう語った。

「マドリードにおける私たちの最大のライバルは、ティッセン=ボルネミッサ美術館でもソフィア王妃芸術センターでもありません。レアル・マドリーのミュージアムです!」

 スタジアムとミュージアムを見て回るベルナベウツアーは、マドリードを訪れたサッカーファンの《マスト》だった。レアルにとって過去とはクラブの偉大さの一部であり、過去を展示するのは記憶を共有することであり神聖化することでもあった。

 盗難の危険性を考慮しても、バロンドールの展示はそれに値した。CL優勝13回を誇るヨーロッパ最高の名門クラブにとっても、バロンドールは個人表彰でありながらクラブの価値を高めるものでしかなかった。そうであるからルイス・フィーゴ(バルセロナ)やファビオ・カンナバーロ(ユベントス)のように、夏の移籍で新たにクラブに加わった選手が受賞しても、自分たちの栄誉としてそれを讃えたのだった。

スター軍団が集めた11個のバロンドール

 現在、レアルのミュージアムには、11個のバロンドール(アルフレッド・ディステファノ=1957年、59年、レイモン・コパ=1958年、ルイス・フィーゴ=2000年、ロナウド=2002年、ファビオ・カンナバーロ=2006年、クリスティアーノ・ロナウド=2013年、2014年、2016年、2017年、ルカ・モドリッチ=2018年)と、1989年にFF誌からディステファノに特別表彰として授与された世界唯一のスーパーバロンドールのレプリカが飾られている。

 そこにジネディーヌ・ジダンのトロフィーがないのは、彼が受賞したのはユベントスの時代であったからだが、ユーベのミュージアムにも彼のトロフィーは置かれていない。責任者のマルコ・アルバノが事情を説明する。

「本来ならばすべてを展示して業績を讃えるべきだが、クラブの選手が受賞した9回《註:2006年のファビオ・カンナバーロも自クラブのものとしてカウント》のうち展示されているのはふたつだけだ。オマール・シボリ(1961年)の息子が寄贈したものと、現在副会長を務めるパベル・ネドベド(2003年)だけで、他の受賞者たち――パオロ・ロッシ(1982年)とミシェル・プラティニ(1983年、1984年、1985年)、ロベルト・バッジョ(1993年)、ジネディーヌ・ジダン(1998年)、ファビオ・カンナバーロ(2006年)は、トロフィーに代わりユニフォームを飾って栄誉を称えている」

【次ページ】 クラブにとってのバロンドール

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