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シェフチェンコは本物、フリットはレプリカ、ジダンはなし…ビッグクラブのミュージアムに見る《バロンドールの価値》とは?
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フランス・フットボール誌France Football
photograph byL’Équipe
posted2021/11/11 17:00
6選手分、8つのバロンドールトロフィーが展示されているACミランのミュージアム。本物はシェフチェンコとファンバステンのものだけ
「私たちはフランツ・ベッケンバウアーが獲得したふたつのトロフィー(1972年、1976年)のミニチュアレプリカを、昨年、彼の75歳の誕生日を祝って飾った」と、ミュージアムのディレクターを務めるハンスペーター・レナーは述べる。
「また去年の3月には、60歳を迎えたローター・マテウスのトロフィーも、獲得当時(1990年)はインテル・ミランの所属だったにもかかわらず展示した」
ベッケンバウアーが獲得した本物のトロフィーは、ザルツブルク郊外にある彼の高級ヴィラに設けられた専用の部屋に置かれている。一方、クラブの会長職をもうすぐ辞するカールハインツ・ルンメニゲは、ゼーベナーシュトラーセにある本部の会長室に飾っていたトロフィー(1980年、1981年のいずれか)を、他の荷物とともに自宅に持ち去ろうとしている。
バルセロナのふたりのレジェンド
バイエルンとは対照的にバルセロナは、レジェンドであるヨハン・クライフの業績を全面的に讃えている。ジョルディ・ペニャスが事情を語る。
「2017年(2016年3月24日の逝去からほぼ1年後)にクライフの家族が、彼が獲得した3つめのバロンドール(1974年、バルセロナに所属時)をミュージアムに寄贈した。クライフのための特別展示室でいつでも見ることができる。息子のジョルディ・クライフも、『収まるべきところに収まった!』と、オフィシャル・セレモニーの際に語った」
とはいえミュージアムの最大の目玉はメッシのスペースである。さらにペニャスが語る。
「ホルヘ・メッシ(メッシの父親)に話をつけて、レオ(メッシの愛称)がバロンドールを獲得するごとに本物を貸してもらい、パリの宝飾店メレリオ・ディ・メレール(バロンドールが創設された1956年から今日まで、トロフィーの制作を請け負っている)にレプリカの制作を依頼した。完全にクラブの私的な事柄であり、展示するにあたりメッシ本人を招いてのセレモニーもおこなってはいない。ただこのウィンドウこそがミュージアム見学のハイライトであり、最大の呼び物でもある。人々は並んだ6つのトロフィーを自分の目で見て写真に収めるために、長蛇の列を作っているのだから」
それこそが、ファンが夢見た至高の瞬間であるのだろう。