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<セッターは誰に託す?>「金メダルはすべて新戦術」5年ぶり再登板、女子バレー眞鍋政義新監督のパリ五輪への課題
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byJMPA
posted2021/10/18 06:00
ロンドン五輪では銅メダル、リオ五輪では準々決勝敗退という成績を残した眞鍋新監督。再登板での手腕が問われる
眞鍋氏は2014年に「これまで3度のオリンピックでの(男女の)金メダルは、すべて新戦術で獲得しています」と語っている。今回もまた、どこに活路を求めるか、追求することになるだろうし、身長の差をどう埋めるかを考える点では、中田監督と相通じる。
どのような戦術をとるにせよ、建て直すにあたって、ポイントの1つとなるのは、いかに戦術のディティールを詰められるか、そしてチームの結束を築けるかだ。東京五輪では、戦術の精度を突き詰めきれなかった感は否めないし、メンバー間にも温度差があったのではないか。勝利への執念という点でも、一様ではなかったように感じられる。
ロンドン五輪の時はIDバレーを軸に、また、選手にアドバイスをする際、データを活用しながら行なうことで説得力を持たせ、理解を得ることで選手から信頼を得て求心力を生みだすことに奏功した。成功体験は今回いかすことができるはずだ。
竹下佳江のような“軸”は見つかるか
もう1つは、セッターの問題だ。眞鍋氏がロンドンへ向けて就任したときには豊富なキャリアを持ち、選手からも信頼を置かれていた竹下佳江がいた。いわば、軸となる存在がそもそもあった。ただリオへ向けては竹下が引退し、それにかわるだけの存在感を持つセッターが育ってこなかったのは否めない。
そして中田監督になってからは、当初は冨永こよみ、佐藤美弥、宮下遥、その後は田代佳奈美、冨永、佐藤……というようにリオ代表だった宮下と田代を含め、さまざまな形を試しながら、軸となる選手が定まらなかった。最終的には、今年になって初招集した二十歳(大会時)の籾井あきがオリンピックの正セッターとなったが、時間が足りなかったため、周囲と合わせ切るまでには届かず、また緊張から本来とは異なるプレーぶりも見られた。
正セッターに近いところまで来た佐藤が五輪延期となったことから昨年引退し、また籾井は帰化を待たなければならなかった事情もあるが(註:高校時代までペルー国籍だった)、より緻密な戦いが求められる以上、柱となるセッターが最後まで見つけられずに来たことには変わりない。
この「日本の司令塔を誰が担うか」については眞鍋氏が直面する課題でもある。
ロンドン五輪に挑んだときとは状況は異なる。その中でどう、新しい日本代表を組織していくか。時間との闘いはすでに始まっている。