令和の野球探訪BACK NUMBER
《いよいよ運命のドラフトへ》慶大4番・正木智也が“注目スラッガー”になるまで「僕は人に恵まれています」
text by
高木遊Yu Takagi
photograph bySankei Shimbun
posted2021/10/10 06:02
上位指名候補として早くから注目を集めてきた正木智也。抜群の吸収力を持つ男はどの球団に導かれるだろうか
正木は自身の野球人生について「僕は人に恵まれています」と何度も繰り返す。良い出会いに加え、それを最大限の力に変えるのが正木の大きな武器だ。堀井監督も「正木は理解力があり、芯がしっかりしていて、あまり一喜一憂しないタイプ。私の言葉を、毎回自分の腹に落として、自分で深く考えてから“分かりました”と言っていますね」と、その姿勢を高く評価している。
現在のスイングの基礎を作ったのは中学時代だ。全国屈指の強豪・世田谷西シニアに所属し、当時DeNAでコーチを務めていた蓬莱昭彦氏(現在同シニア総監督)の理論を吸収した。その理論を継承する吉田昌弘監督のもとで、「ボールのライン(投球の軌道)にバットを入れていく」「バットのヘッドの重さを使ってボールを飛ばす」という感覚を掴んだ。
「この2つが今でも自分の役に立っているなと思います。“思いきり振っていないように見えるのに打球が飛んでいく”と今もよく言われるんですけど、それは本当に中学時代の指導のおかげかなと思っています」
高校時代に学んだ「考える野球」
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慶應義塾高校では、慶大の学生をしながらコーチをしていた杉山瑛彦氏に「下半身の使い方や体重移動の仕方を徹底的に教えこまれました」と話し、森林貴彦監督からも「選手たち自らで考える野球」を学んだ。「高校時代からその大事さを分かっているからこそ結果が出ているんだと思うことが多々あります」と振り返る。
野球観や勝つ組織作りを学んだのは慶大入学時から2年秋まで指導を受けた大久保秀昭前監督(現ENEOS監督)だ。
「普段の練習や試合でどのような振る舞い方をしたらチームが勝利に近づくのかということや、打者の傾向による守り方、全力疾走やキャッチボール、カバーリングの大切さや感覚を養うことができたのはすごく大きかったです」
そして2年冬から指導を受ける堀井監督のもとで現在の打撃を完成させた。それまでは自ら試行錯誤して打撃を作り上げてきたが、三菱自動車岡崎とJR東日本で数多くのプロ野球選手を育てた堀井監督が就任してからは、コミュニケーションを頻繁に図りながら打撃を改良していった。
大事にしているのはバットを内から出すように振る「インサイドアウト」という技術で、現在の打撃の柱としている。