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誰もが“ケンカマッチ”を期待したが…朝倉未来がRIZIN新大会で見せた“寝技の意味”とベルトへの渇望「ケンカにも戦略はある」 

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橋本宗洋

橋本宗洋Norihiro Hashimoto

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photograph byRIZIN FF Susumu Nagao

posted2021/10/07 17:01

誰もが“ケンカマッチ”を期待したが…朝倉未来がRIZIN新大会で見せた“寝技の意味”とベルトへの渇望「ケンカにも戦略はある」<Number Web> photograph by RIZIN FF Susumu Nagao

10月2日に初開催となった『RIZIN LANDMARK vol.1』で対戦した朝倉未来と萩原京平

 怖い先輩に噛み付く後輩。制裁か、下剋上か。大会前日の公開計量、2人は額を突きあわせて睨み合った。朝倉曰く「明日はレベルの違いを教えてやる」。誰もが“ケンカマッチ”を期待した。その結果が、冒頭のケンコバの言葉につながるわけだ。

朝倉「僕が寝技で勝ったら面白い」

 だが“ケンカマッチ”と“ケンカ”は違うのだった。スタンドの展開で目立ったのは萩原が放つ右の蹴り。ローにしてもミドルにしても的確で速い。相手に少しずつダメージを与え、前進を止める効果もある。萩原にしても、単に“ど突き合い”を狙っていたわけではないのだ。

 朝倉はグラウンド戦を仕掛けた。萩原の打撃にタックルを合わせる。右手で足を掴み、左手で上体を押してテイクダウン。1ラウンドから3ラウンドまで、すべてこの形で寝技に持ち込んだ。鮮やかなタイミングだった。

 この展開を想定していた萩原が立ち上がる場面もあったが、主導権は朝倉が掴んだままだった。上から抑え込み、あるいはバックから裸絞めを狙う。最終3ラウンドにはグラウンドでヒザ、ヒジ、パンチのラッシュをかけた。萩原も粘りを見せたが、判定3-0。朝倉の盤石の勝利と言ってよかった。

 激しい打撃戦を楽しみにしていたファンにとっては、スカされたような内容だったかもしれない。“どちらが勝ってもKO”、そんな試合が見たかったと。朝倉自身も試合前「フィニッシュする(KO、一本で勝つ)」と言っていた。

 ただこの勝ち方は“予告通り”と言えるものでもあった。試合前の朝倉は、こんな発言もしているのだ。

「今回の試合はどんどん組んでいく」

「盛り上がるかはともかく、僕が寝技で勝ったら面白いんじゃないですか」

「べつに相手の得意なところ(打撃)で闘う必要はないので」

見据えているのは“この先”

 まして今回は再起戦だ。連敗は絶対に避けなければならない。試合後のインタビューでは「けっこうなプレッシャーがありましたけど勝つことができてよかった」と心境を吐露している。マスコミとの質疑応答では「ホッとしました。少し休んだらまた地獄の追い込みをします」。やはり見据えているのは“この先”だ。大会の解説を務めたチャンピオン・斎藤にリマッチをアピールする場面もあった。

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