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平日は個人練習のみ? 国立大理系右腕コンビが待つ運命のドラフト「なんとしてでもプロに行きたい」
text by
高木遊Yu Takagi
photograph byYu Takagi
posted2021/09/29 11:06
草薙球場にある沢村栄治像の前でポーズを取る井手駿、石田雄大(ともに静岡大)。ともに球速がアップするなど、4年間で大きな成長を遂げてきた
こうして自らで考え、外部からの刺激も受けて力をつけてきた井手と石田はともにプロ志望届を提出。しかし、コロナ禍の影響で静岡学生リーグの開幕が約1カ月遅れたことで、2人は一番大事な時期にアピールの場を失ってしまった。
そこで、行われたのが冒頭で紹介した紅白戦だ。開催を決めた高山監督はその意図を語る。
「県内で一番立派な球場で試合用ユニフォームを着て紅白戦をやることによって、ほぼ実戦と変わらない雰囲気や意識で取り組めると思いました。また、スカウトの方にとってもアクセスが良く、翌日から始まる都市対抗東海地区2次予選前に立ち寄りやすいと思い、この日程と会場にしました」
その目論見通り、6球団8人ものスカウトが集まり、2人に熱視線を送った。雨が降りしきる中、ともに3回1失点。評価はもちろん様々だが、日本ハム・熊崎誠也スカウトは井手について「いろんな球種を投げられて、それぞれでストライクが取れる。あとはストレートの出力なので、ここはプロに入ってからでも変えられる部分ですから」と評し、「タイプ的には久保裕也や小林雅英のようになってくれれば」と将来像を明かした。
石田を見た別のスカウトは「コントロールが良く、空振りの取れる変化球もあって良かった」「腕を振って投げられるスライダーが良い」と一定以上の評価を与えている。
スカウトたちからは「土曜日曜は予定が重なり、なかなか観に行けないので火曜日のこの時間(午前11時から)やっていただいたのはありがたい」との声も複数聞かれ、高山監督の作戦は成功したと言えるだろう。
紅白戦を終えた高山監督は「制限がある中でも活動を許可してくれている大学(学生生活課)への恩返しとしても結果を出したいですね」しみじみと振り返った。
あとは10月11日のドラフト会議で、彼らに吉報が届くかどうか。多くの刺激を受けて「なんとしてもプロに行きたい」と意識を変え、自らの意志や工夫で道を切り拓いてきた2人が運命の時を待っている。