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平日は個人練習のみ? 国立大理系右腕コンビが待つ運命のドラフト「なんとしてでもプロに行きたい」
text by
高木遊Yu Takagi
photograph byYu Takagi
posted2021/09/29 11:06
草薙球場にある沢村栄治像の前でポーズを取る井手駿、石田雄大(ともに静岡大)。ともに球速がアップするなど、4年間で大きな成長を遂げてきた
井手は、入学時に4年生だった投手が4人も社会人野球や独立リーグの世界に進むのを間近で見た。全員が高校時代は無名の存在だったが、静岡大での4年間で力をつけて、さらにレベルの高いステージに進んだことに大きな刺激を受けたという。
「皆さんに可愛がってもらっていましたし、本気で上を目指そうと思いました」と意識が変わった井手は、練習内容も自らで考えるようになり、日々のストレッチも習慣化させた。2年時からは多くの試合に登板するようになり、今春にはエースとして静岡学生リーグで5勝1敗の好成績を挙げた。入学時133キロだった球速は148キロにまで到達した。
石田が大きな刺激を受けたのは、2年前のドラフト会議だ。阪神タイガースの育成ドラフト2位で奥山皓太(外野手)が指名を受けた。「ここからでもプロに入れるんだ」とプロを意識するようになった。そして、石田もまた入学時は140キロだった球速を148キロにまで伸ばしている。
選手7名と学生コーチ2人
前述したように平日は個人練習だ。浜松キャンパスの学部に所属する選手は現在、7選手と学生コーチ2人のみ。授業後に9人全員で行うのはキャッチボールとノックくらい。あとは「誰もいないからこそ、自分で考えて練習をする」(井手)と各自が課題を持って練習に取り組んでいる。
週末は静岡キャンパスでの全体練習に参加するため、土曜の朝早くに出発。浜松から静岡まで新幹線を使えば27分で到着する。だが、アルバイトもしているとはいえ毎週のように高い交通費を払うことは容易ではないため、在来線に1時間以上揺られて移動。練習後は同キャンパスの近くに住んでいる選手の部屋に泊めてもらっている。
さらに、同大OBでもある高山慎弘監督が強豪社会人チームとオープン戦を組むなど、積極的な強化が彼らの成長を加速させている。中でも、プロ・アマ多くの選手が慕う北川雄介トレーナーをスポットで招聘したことが2人にとっては大きな刺激をもたらした。
「左の腹斜筋を使って体幹から投げるイメージを教えてもらいました」(井手)
「いただいたアドバイスを考えて、工夫する中でストレートの回転数が上がっていきました」(石田)