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平日は個人練習のみ? 国立大理系右腕コンビが待つ運命のドラフト「なんとしてでもプロに行きたい」
posted2021/09/29 11:06
text by
高木遊Yu Takagi
photograph by
Yu Takagi
9月14日の静岡・草薙球場で行われた静岡大学の紅白戦に、NPB6球団のスカウトが集まった。お目当ては、国立大の工学部で勉学に励みながら、最速148キロを投じる井手駿(いで・はやお)と石田雄大(いしだ・ゆうた)の両右腕だ。
国立大で工学部――それだけでも異色な存在だが、さらに深掘りしていくと2人が稀有な存在ということがよくわかる。
井手と石田が通う工学部の浜松キャンパスは、グラウンドのある静岡キャンパス(静岡市)から西へ80キロ以上離れている。そのため平日は全体練習に参加していない。週末以外は個人練習のみ。そんな環境下にいて、2人は「ドラフト候補」にまで登り詰めた。
ともに愛知県出身、高校時代は「不完全燃焼」
井手は隣県である愛知県・小牧市に生まれ、南山中3年時にエースとして全国大会(全中)に出場。県立高蔵寺高校時代は1年秋と最後の夏に16強入りを果たしたが、2年秋に右ひじを痛めていたこともあり「不完全燃焼でした」と当時を振り返る。
石田も同県西尾市に生まれ、県立刈谷高校2年秋に捕手から投手に転向(1年時は内野手だった)。エースとして2年秋と3年春に16強入り。最後の夏は4回戦で敗れたが、「投手をやり始めたばかりだったので、もっとやりたいと思いました」と競技継続を決断した。
そのため、ともに学力に合うだけでなく、野球でも高みを目指すことができそうな静岡大にやってきた。
またそこで、先輩たちの姿を見て、より大きな夢を描くようになった。静岡大は2014年春に全日本大学野球選手権に43年ぶりに出場以降、各県から文武両道を目指す好選手が集まっており、2人の想像以上に能力の高い選手たちばかりだった。