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智弁学園は5日間4試合…超過密日程の甲子園で「W智弁」に負けた2校の敗因「クローザーの右ヒジ炎症」「エースの下半身の疲れ」
text by
氏原英明Hideaki Ujihara
photograph byHideki Sugiyama
posted2021/08/28 20:30
甲子園準決勝、智弁学園8番小畠一心の3ランホームラン。4回の1発で京都国際を3ー1で下した
もちろん、この3点で勝敗がついたというわけではない。2番手として5回からマウンドに上がった森下がゲームを作り直すことができれば、可能性はあった。実際、森下は9回まで智弁学園の打線を無失点に抑えて期待を抱かせた。
一方で、実際にそうして試合をひっくり返せたとして、森下に負担が掛かった状態で明日の決勝に進出していたら……どれほどのパフォーマンスを発揮できていたかは非常に難しい話だろう。なにより森下はまだ2年生なのだ。
これは、勝利の方程式が崩壊して敗れた準決勝第1試合の近江にも言えることだ。大会の最終盤にさしかかって、優勝までの青写真をどれほど描けているかが重要になる。
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京都国際・小牧監督の次の言葉は嘘偽りのない本音の言葉だろう。
「優勝できるイメージは湧きませんでした。ベスト4では一番力がないと思っていました。甲子園で勝ち上がるためには、全国で通用する複数投手をしっかり育て上げないといけないと強く感じました」
平野の奮闘に期待するしかなく、しかし、それはギャンブルにも等しかった。
小牧監督は続ける。
「平野は前回(準々決勝)と比べると良くなかったです。いい球を投げるんですけど、勝ちきれない。ムキになって腕をぶん回しで投げて、コントロールが甘く入って打たれるというのを繰り返している。森下と平野は2年生でともにエースを争ってきましたけど、春から夏にかけて、2人の差はついたと思います」
初戦となった2回戦からエース森下の存在感は絶大だった。前橋育英との試合では130球を投げて完封勝利。3回戦の二松学舎大付戦は9回裏に同点本塁打を打たれたものの、延長10回を投げ切った。準々決勝の敦賀気比戦では平野に代わり、6回から救援して勝利に導いている。
初出場の京都国際は“目の前の1勝”を目指して必死に戦ってきただけに、当然エースには負担はあっただろう。それが先の小牧監督の言葉にある下半身の疲れにもつながっている。準決勝で4回に平野が本塁打を打たれて、森下がマウンドにあがることになった時点で、優勝へのプランは崩れたということである。
近江のクローザーは「右ヒジの炎症」
第1試合で智弁和歌山に敗れた近江も、クローザーを務めていた岩佐直哉が右肘の炎症を起こしていて登板ができなかった。