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<バー“たっちあっぷ”に潜入>
“奇跡のバックホーム”20年目の物語。 

text by

村瀬秀信

村瀬秀信Hidenobu Murase

PROFILE

photograph byShigeki Yamamoto

posted2015/07/30 06:00

<バー“たっちあっぷ”に潜入>“奇跡のバックホーム”20年目の物語。<Number Web> photograph by Shigeki Yamamoto

【甲子園 名勝負ベスト100 5位 89票】

1996決勝 松山商業×熊本工業

 夏の県勢初優勝を狙う熊本工は1点を追う9回2死から1年生・澤村が起死回生の同点本塁打。10回も1死満塁とサヨナラのチャンスをつくったが、右翼への飛球を松山商・矢野に本塁にダイレクトで返球されて三塁走者・星子は本塁憤死。11回に先頭・矢野の二塁打を足掛かりに3点を奪った松山商が、春夏合わせて7度目の優勝を果たした。

   ◇

 熊本のとあるスポーツバー。
 ここにはひとつのプレーに人生を翻弄された、ある男の「生きる意味」があった。

   ◇

「これ、いい写真でしょ。あのバックホームの直後、手を挙げてアピールしとる場面。星子は『北斗の拳』のラオウみたいな唯我独尊な人間でした。人の言うこと、なーんも聞かんの。だから、これはラオウが天に還るところ。“わが生涯に一片の悔いなし”ってね。いや、悔いはあったのかな。本当に誰よりも野球が好きだったからさ」

 あの試合、熊本工の記録員としてベンチ入りしていた高波恵士が、カウンターの中で水割りを作りながら言う。

「……おもしれぇじゃねぇか」

 天に召されたと例えられた星子崇もまた、傍らでまんざらでもなさそうに笑う。


 熊本の繁華街、下通りの雑居ビルにある小さなバー。甲子園のダグアウトを模したカウンターの正面には、あの決勝を戦った熊本工と松山商のユニフォームが並び、その上に「犠飛」と書かれた色紙が鎮座する。

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夏の甲子園 百年の青春。

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夏の甲子園 百年の青春。

 

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