甲子園の風BACK NUMBER
〈次戦は大阪桐蔭〉投手への未練を捨てて… 小学校の頃は捕手だった後輩の球を受ける立場になった“近江の要”のアツい物語
text by
間淳Jun Aida
photograph byGetty Images/Kyodo News/JMPA
posted2021/08/22 17:03
近江高校で投手から捕手に転向した島滝悠真。大阪桐蔭相手にもそのリードは光るか
最速146キロの後輩だがあえて変化球中心
この試合、山田とバッテリーを組んだ島滝は、変化球を配球の中心にした。
山田の特徴といえば最速146キロの直球。そして、地方大会でイニング数を上回った高い奪三振率だ。ノーゲームとなった一戦では、初回に投じた全10球のうち6球が直球。最速は144キロを記録。直球を主体にして、三振も2つ奪った。島滝はこの残像を利用し、今度はスライダーやツーシームを軸に、山田をリードした。
「ストレートを待っている印象があったので変化球を多めにして、早いカウントで打たせていくことを意識しました。5回まででしたが、1度対戦して相手打者の特徴がだいたい分かっていました」
直球を狙ってスイングする打者のバットの芯を外す島滝の意図に応えた山田は5回2失点。68球と球数をかけずに、背番号1をつける岩佐直哉に必勝リレーのバトンを渡した。
ピッチャーが変われば配球を変える
島滝は投手が岩佐に代わると配球を変えた。
6回、岩佐は日大東北の先頭打者に対して初球にスライダーでファウルをかせぎ、2球連続の直球で空振り三振。続く3番打者にも2球目から直球を連投して空振り三振に斬った。
4番には一転して4球連続のスライダーで空振り三振を奪ったが、7回以降も直球で押して無失点に封じた。島滝は、ノーゲームの時に対戦がなかった岩佐の直球に日大東北が対応できないと判断し、変化球で組み立てた山田の時の配球から切り替えたのだった。
島滝は打席でも捕手としての成長を見せ、投手の経験も生かした。1点リードの2回。四球で出塁した走者を一塁に置き、打席に立った。初球のスライダーを見送ってボール。2球目の高めに浮いた直球をバックスクリーンに叩き込んだ。ストライクがほしいバッテリーの心理を読み切った公式戦初本塁打だった。