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〈球速差40キロ〉名門・横浜も打てなかった智弁学園エース西村王雅の“魔球”…“甲子園投手だった父”への意地も?
posted2021/08/22 17:02
text by
田口元義Genki Taguchi
photograph by
JIJI PRESS
「へばってきた」
智弁学園のエース左腕・西村王雅が明かす。
それはそうだ。
2回戦の相手は、あの横浜である。
夏だけで19回も甲子園に出場し、2度の日本一。1998年には松坂大輔を擁して春夏連覇も成し遂げた超名門。しかも今年は、神奈川県大会7試合でチーム100安打、打率4割6分9厘と、圧倒的な破壊力で全国屈指の激戦区を制したとなれば、誰だって心身を擦り減らせてしまうというもの。
西村は覚悟を決めてマウンドに上がった。
智弁学園・小坂監督「甲子園に来てから、リズムがいい」
「横浜なんで点は取られると思っていました。5回まではしっかり抑えようと」
エースはつまり、初回からトップギアに近い状態で投げ続けていたわけだ。事実、6回までは散発3安打に抑えながら、7回と8回はいずれも得点圏にランナーを許し、2イニングだけで4安打を浴びた。
「7回あたりからへばってきて、ボールを捉えられていたんで。監督から『代わるか?』と聞かれたんで『代わります』と。他のピッチャーも準備ができていたと思うんで」
横浜の打者に捕まり始め、体力の限界を感じ取っていた。それでも、西村は8回無失点と、「100安打打線」を沈黙させた。
エースの好投、そして終盤の粘りに打線も応え、プロ注目の前川右京が3安打4打点、1本塁打と暴れるなど5得点を挙げた。
監督の小坂将商は「今日は西村と前川に助けられた」とした上で、「投」の立役者のパフォーマンスをこのように評した。
「甲子園に来てからしっかりゲームを作ってくれていると言いますか、リズムがいい」