酒の肴に野球の記録BACK NUMBER
「大谷翔平のMVP間違いなし」アメリカでの高評価は成績でも明らか… 投打の進化が分かる四球数と「13.75」のスゴさ
text by
広尾晃Kou Hiroo
photograph byGetty Images
posted2021/08/22 11:03
ここ1カ月は投手としての抜群の安定感が目立つ大谷翔平。シーズンMVP獲得もすでに“確定事項”なのかもしれない
ちなみに今季の投手・大谷翔平は、6月23日のジャイアンツ戦で105球を投げたのが最多。100球以上投げた試合はこの1試合だけ。大谷翔平に自由に野球をさせているように見えるマドン監督だが、球数の管理は厳格に行なっているのだ。
「WAR」という総合指標での、恐るべき数値
大谷の現在のMLBの評価を総合指標WAR(Wins Above Replacement)で見るとこうなる。WARは2つの記録専門サイトが発表している。両方とも見てみよう。カッコ内はア・リーグでの順位。いずれも8月20日時点。
★BASEBALL REFERENCE
打者 4.1(8位)/1位はマーカス・セミエン(ブルージェイズ)の5.6
投手 3.8(5位)/1位はロビー・レイ(ブルージェイズ)の4.7
★FanGraphs
打者 4.6(4位)/1位はウラディミール・ゲレーロJr(ブルージェイズ)の5.3
投手 2.6(12位)/1位はネイサン・イオバルディ(レッドソックス)の4.1
日本的な考え方では、MVPは「優勝したチームで最も活躍した選手」に与えられるが、MLBではチーム成績に関係なくリーグで最も活躍した選手に与えられる。また投打のタイトル獲得ではなく、WARなど貢献度を示す指標が重要視される。
大谷の同僚であるマイク・トラウトはMVPを3回受賞しているが、チームがリーグ優勝したのは1回だけ。打撃タイトルも打点王が1回あるだけだ。
WARは「セイバーメトリクスによる打撃、走塁、守備、投球を総合的に評価した選手の貢献度を表す指標」である。打者としてのWARと投手としてのWARは、加算が可能でもある。
投打ともにリーグ上位の成績を残している大谷翔平は、投打のWARを加算すれば、圧倒的な数字になる。今季のMVP間違いなしと言うアメリカの評価は、ここからきているのだ。
筆者はいまだに「ほんまか?」という心持ちでいるのだが、9月末まで大谷が元気で野球をすることができれば、日本人選手としてはイチローに次ぐ2人目のMVPを獲得することになる。しかも「投打合算」での獲得は、150年近いMLBの歴史でも初めてのことだ。
今後も「ほんまか?」と自問自答しながら、収穫の秋を待ちたいと思う。
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