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「大谷翔平のMVP間違いなし」アメリカでの高評価は成績でも明らか… 投打の進化が分かる四球数と「13.75」のスゴさ
text by
広尾晃Kou Hiroo
photograph byGetty Images
posted2021/08/22 11:03
ここ1カ月は投手としての抜群の安定感が目立つ大谷翔平。シーズンMVP獲得もすでに“確定事項”なのかもしれない
投手としては7月以降、明らかに四球が減った
以下、投手・大谷の月別の成績、K9(9回あたりの奪三振数)、BB9(9回あたりの与四球数)になる。
4月3試1勝0敗13.2回 率3.29 K9/15.15 BB9/8.56
5月4試0勝1敗22.2回 率2.38 K9/10.72 BB9/5.16
6月5試2勝0敗23.2回 率4.94 K9/12.55 BB9/3.42
7月3試2勝0敗20.0回 率1.35 K9/7.65 BB9/0.45
8月3試3勝0敗20.0回 率1.80 K9/9.00 BB9/1.35
シーズン開幕当初の大谷は昨年までと同様、剛速球で打者をねじ伏せる一方、四球などの走者を出して綱渡りになるシーンも多かったのだ。
6月30日のヤンキース戦では、立ち上がりから2被安打4四球を許しキャリア最短の0.2回自責点7で降板。猛暑の中とはいえ、前途多難を思わせたが、大谷は次の7月6日のレッドソックス戦で7回5被安打無四球、自責点2で4勝目、そこから見違えるようなマウンドを見せるようになったのだ。
数字を見ていくと、7月の与四球は3試合20回でわずか1個、8月も3試合20回で3個だけ。制球力が急上昇しているのだ。奪三振率は7月7.65、8月9.00と、6月以前よりも落ちているが、三振を奪わなくともいろいろな方法で打者をアウトにすることができるようになったのだ。これは明らかな進化だろう。
タイガース戦の「8回90球」に隠れたスゴさとは
その結果として大谷は春先よりもはるかに楽に投げられるようになっている。それを示すのが、イニング当たりの投球数だ。月次で見ていく。
4月 18.07球(13.2回247球)
5月 14.87球(22.2回337球)
6月 16.31球(23.2回386球)
7月 14.20球(20.0回284球)
8月 13.75球(20.0回275球)
NPBでもMLBでも1イニング15球以内で投げることができれば優秀とされる。8月の13.75球は円熟期にある先発投手の数字だ。三振で打者をアウトにするには最低でも3球は必要だ。しかし、打たせて取るのなら1球でもアウトにできる。投手・大谷の意識は、7月あたりを境に変化したのではないか。
8月18日のタイガース戦では、8回を90球で投げ切った。1イニング当たり11.25球。これは驚異的だ。