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《競泳・金メダル》大橋悠依は2年前の夏「生活するのもしんどくなるくらいでした」… 苦しみから救ったスタッフのひと言とは
text by
田坂友暁Tomoaki Tasaka
photograph byHiroyuki Nakamura
posted2021/07/25 11:50
2019年の世界水泳で大橋悠依のメダルは1つに終わったが、それ以上に精神面で得るものは大きかったようだ。
真面目さが気づけばマイナス思考に。
それは、かつて感じたことがないプレッシャーからくるものだった。2年前、初めて日本代表に入り、ノンプレッシャーのなか勢いで獲得したメダル。さらに2018年にも結果を残したことで、大橋にかかる周囲の期待は、大橋自身が予想していたものよりもはるかに大きかったに違いない。
真面目な大橋は、その期待に応えようとした。全身全霊をもって、自分の持てる力、自分ができることすべてを懸けて、周囲の期待に応える泳ぎをしようと努力してきた。辛い練習に立ち向かうため、自分を鼓舞するため、『自分はもっと頑張らないとダメなんだ』と、自分で自分を追い込むことで、気持ちを奮い立たせていた。
しかし、今シーズンに入ってから自分が納得できる泳ぎができないレースが続くにつれて、“自分はやれる”という自信よりも、“自分はダメ”というマイナス思考に覆われていってしまった。
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そして光州に入っても、マイナスイメージを払拭できていないことが、試合前の話からもよく分かった。
「爆発力があってもなくても、自己ベストは出さなきゃ“いけない”ので、しっかりと練習の成果を出したいと思います」
失格を含めて負の連鎖だった。
200m個人メドレーで失格になったあとも同じだった。
「前向きになれなくて、気持ちを切り替えなきゃと思ってもそれができなくて。できないから、ダメなんだの繰り返しでした」と、見えない出口を求めてさまよう毎日。そうこうしている間にも、400m個人メドレーの日が迫ってくる。その焦りもあり、どんどん深みにはまっていくばかりだったのだろう。
真面目で、自分のことを理解し、客観視できる選手ほど、深みにはまりやすい。どこかで『悩んでいてもしょうがない! やるしかない!』と切り替えられれば良いのだが、冷静に自分の状態が分かるからこそ、自分はダメだと追い込んでしまう。まさに、大橋は負のスパイラルに迷い込んでしまったのである。