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プロ野球スカウトのリアル評価を聞いた 今秋ドラフト候補《6人の社会人投手》「栗林良吏(広島)と比較される右腕は…」
text by
安倍昌彦Masahiko Abe
photograph bySankei Shimbun
posted2021/07/24 17:04
「ドラ1もある」と言われる廣畑敦也(三菱倉敷オーシャンズ・23歳)
「左打者のインコースが使えるのかどうか、そこだけですね。総合力、ピッチングセンスはOKだと思ってます。タイプとして、パワーで圧倒する投手じゃないと見てます。技術がほしい。そうなると、攻め口としてベースの両サイドをどれだけ広く使えるか。阪神の伊藤(将司)が1年目から働いてるのは、左打者の足元にツーシームみたいなボールがあるからでしょ。あれでファール打たせてカウント作ったり、内野ゴロ打たせたり……どっちにしても、なかなかヒットにならないコースですからね。JR四国でいちばんいいバッターは水野(達稀)だと思うけど、せっかくスライダーで体勢崩してるのに、内かな、と思うと、やっぱり外だもんね……」
【投手編4】「中継ぎの150km右腕」八木彬投手(24歳)
2対2の同点で9回を迎えたこの試合、JR四国の3番・水野達稀遊撃手(20歳・170cm71kg・右左・丸亀城西高)がアッと驚く右中間サヨナラ弾で、ピリオドを打っていた。
打たれたのが、7回から森翔平投手をリリーフしていた八木彬投手(24歳・182cm88Kg・右右・東北福祉大)。昨年と、ガラリと変わって見えて、驚いた。
「去年の都市対抗とか、代わりばなから150キロ連発でしたけど、ちょっとゴツゴツしてましたよね」
このスカウト、力任せ傾向のことを「ゴツゴツ」と表現してくれた。都市対抗予選から「150キロ腕」と話題になり、評判を裏切らないように!と気負っていたのかもしれない。そこから、ムダな力みが抜けて、今日はスイスイっと気持ちよさそうに腕を振っているように見えた。
「ボールが先行しても、次のボールでサッと平行カウントに立て直して、今日は安心して見ていられた。タイプとしては中継ぎだから、ストライク先行で投げられるようになればありがたい。あとは、変化球のコントロールかな。今日も、ストライクをとれる変化球があったら、サヨナラ喰らうことはなかったかもしれないよね」
【投手編5】「学生時代はなんもしてないですから」セガサミー・横山楓投手(23歳)
セガサミーでは、リリーフの3イニング3分の2、11アウトで5三振を奪った横山楓投手(23歳・180cm83Kg・右左・國學院大)だ。
降りしきる雨を避けて屋根のある席で観戦していたスカウトたちが、傘を手に、ネット裏の捕手後方の席へ移動していく。
宮崎学園高当時から速球投手として嘱望されていた横山だったが、大学では故障がちで不完全燃焼に終わり、社会人でその鬱憤を晴らすように快投を始めている……と、そこまでは聞いていた。
「それにしても、ここまで良くなってるとは……。まあ、学生時代はなんにもしていないですから、ようやく投手としての“歴史”が始まったわけで。数字より(ホーム)ベース上でのストレートの強さがいちばん。角度もあるしね。5三振で空振り三振が4つでしょ。勝負にいっても当たらないストレート。1回戦、あと4試合ありますけど、ストレートの勢い、活きのよさならNo.1じゃないですかね」
横山投手が投げた41球のうち、9割方はストレート。コンスタントに145キロ前後の表示だったから、実際には150キロ近い「快速球」だったろう。
「今日はあまり投げてないけど、独特の沈むボールもプロで勝負球になりそうだし、この大会いちばんの“収穫”になるかもしれないですね」