【投手編6】「12球団30人が注目」TDK・鈴木大貴投手（23歳）

　1回戦最後の6日目は、トヨタ自動車対TDKの1試合だけ。それでも、12球団30人ほどのスカウトがネット裏に詰めかけたのは、TDK・鈴木大貴投手（24歳・182cm84kg・右右・流通経済大）の投球を確かめるためだと、複数のスカウトが教えてくれた。

　三菱自動車倉敷・廣畑敦也ほか、大卒ルーキー投手が何人も怖いもの知らずのフレッシュな投球を展開した昨年の都市対抗野球。この鈴木投手もその1人だった。

　日本新薬の強打線を向こうにまわして、6回までわずか4安打2失点に抑えた。

　反動を作るような独特なボディスイングと、近年珍しくなった大きなワインドアップ。スリークォーターよりサイドに近い角度か……時計の文字盤でいえば「14時」ぐらいの角度から、140キロ後半の速球とカットボールに、沈む系はツーシームなのか。

　前だけを真っすぐに見つめて、ひたすら打者に向かっていく投げっぷりが、こちらの心に刺さった。

「このピッチャーについては、セットポジションでどれだけ同じ球威のボールが投げられるか。その一点に尽きます。素材がいいのは、わかっている。ワインドアップとセットであれだけフォームが変わると、スピードに差が出るのは当然なんですが……」

　セットポジションでは、サッと左足を上げるだけの「クイック」を意識したフォームになる。

「今日も、スタートは143kmで入ったのに、セットになったら5、6キロ落ちる。気のせいか、腕の振りも緩む。その差がどこまで……」

　試合後の囲み取材。鈴木投手もいいピッチングしましたが……という記者の問いかけに、

「そうですかぁ！」

　と、驚いたように返したTDK・佐藤康典監督。

「いや、鈴木はもっともっといいですよ、本来は。春からずっと使いづめで、ちょっと疲れてましてね。まっすぐもスライダーも、今はベストの7割ぐらいじゃないですか。150キロぐらい、普通に投げますからね」

　こういう「誤差」も、聞いているこちらにとっては、なんとも興味深い。

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