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プロ野球スカウトのリアル評価を聞いた 今秋ドラフト候補《6人の社会人投手》「栗林良吏(広島)と比較される右腕は…」
posted2021/07/24 17:04
text by
安倍昌彦Masahiko Abe
photograph by
Sankei Shimbun
社会人野球日本選手権は7月14日、大阪ガス(大阪)が4-2で三菱重工East(神奈川)を下して、2大会連続2度目の優勝を果たした。
昨年に続いて、今年も「社会人の甲子園」である都市対抗野球がドラフト会議後の11、12月開催になる。10月11日のドラフト会議までに社会人野球の「実戦」をみられる機会は、この日本選手権以外には、都市対抗予選のわずかな試合だけ。スカウトたちにとっては実質、この日本選手権が「決断の大会」となる。
そんなわけで、高校野球の甲子園予選が本格化する前、全12球団の多くのスカウトたちが「神戸」に集まった。
今年は「社会人球界に人材少なし」という前評判が立つ中、それでもペナントレースを見ると、広島・栗林良吏(投手・トヨタ自動車)、阪神・伊藤将司(投手・JR東日本)、中野拓夢(内野手・三菱自動車岡崎)……即戦力の供給源として社会人は欠かせないカテゴリーだ。
そこで今大会1回戦を観戦したスカウトたちから、ドラフト注目の選手たちの「ほんとのところ」を伺ってみた。今回はその「投手編」である。
【投手編1】「ドラ1もある」廣畑敦也(三菱倉敷オーシャンズ・23歳)
ドラフト1位候補とも評される廣畑敦也投手(三菱自動車倉敷オーシャンズ・23歳・177cm75kg・右投右打・帝京大)が先発登板した日本新薬戦には、12球団74人のスカウトたちが詰めかけたという。
大学時代には無名の存在だったが、社会人1年目の昨秋あたりからコンスタントに好投を重ね、11月開催になった「都市対抗野球」で、先発の立ち上がりから150キロ前半の速球を立て続けに投じ、カットボール、カーブ、スプリットを交えた緩急自在の投球も披露して、一躍今秋のドラフト上位あるいは1位候補にのし上がってきた。
「去年、大学の時はリストにも載ってなかったのが、1年半でこういうことになるんだから、僕らの仕事、ほんと油断してられませんよ」
その道20年のベテランスカウトが苦笑い。インターネットで「情報」も玉石混淆……とにかく数だけは多く飛び交う今の世の中で、その「網目」をすり抜けるヤツがいる。そこのところが、また面白いという。
「これだけ雨が降り続いているのに、それを言い分けにするような素振りがまったくないのが立派ですよ。その逆は、いくらでもいるけど」
内野グラウンドの土の部分に水が浮く時間帯もあったほどのコンディションの中でも、日本新薬を6回まで無失点。7、8回に3失点したものの、それも詰まったポテンヒットが二塁打になったもので、ジャストミートを許したのは、やはりスカウトたちが注目していた3番・福永裕基三塁手(24歳・180cm83kg・右右・専修大)の打席だけだった。