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全身スーツが話題に ドイツの20代体操選手に聞く“性的画像問題”「自分が自分の体をどう感じるかという問題とは少し違う」 

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了戒美子

了戒美子Yoshiko Ryokai

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posted2021/07/24 11:02

全身スーツが話題に ドイツの20代体操選手に聞く“性的画像問題”「自分が自分の体をどう感じるかという問題とは少し違う」<Number Web> photograph by Getty Images

今年4月の欧州選手権で、ドイツの女子選手たちが着用した”全身スーツ(ユニタード)”が話題となった

 五輪となると急に周囲も選手もメダル、メダルと言いがちな日本とは何かが違う。実力を把握しているからなのだろうか、それとも自分自身が見えているということなのだろうか。どこか地に足がついている大人な印象を受けた。

自分の身体だから「自分で守らなくてはいけない」

 さて、彼女たちが欧州選手権で、最初に長袖長ズボンの“ユニタード”と呼ぶ衣装を着用した時、体操界で少し話題になる程度かなと思ったそうだが、話題は世界中に広まった。「セクシュアリゼーションに対抗する」というメッセージは体操界やスポーツ界にとどまらず、普遍的なものだったからだ。

 ただ、私自身は先に書いたようにこのメッセージをドイツ人が発したことが少し意外だった。競技の前に、肌を露出することへの感覚は国や文化によって違いがあるから、少し意外だったと伝えるとザイツは持論を口にした。

「もちろんそのあたりの価値観の違いはあると思いますよ。ただ、私は個人的に若い女性が裸に近い姿を見せることが好きじゃないんです。でも、最終的にはみんな、自分で決めればいいんだと思います。見せたいんだったら見せればいいし、見せたくないならそれを認めるべきだし。自分の体というのは自分のプライバシーですから、自分で守らなくてはいけないと思います」

 あくまでそこには自分自身がどう感じるかが大事、という考え方があった。

 一方、同じ質問にフォスは理解を示しつつ競技の面から説明をしてくれた。

「言いたいことはわかりますよ。でも、ボディシェイミングの問題(体型や外見に対する悪口)とは少し違うんです。ビーチに行ったときに水着をきたりその手の格好をする時は、足を広げていても誰かに写真を撮られるかなんて考えないでしょう? 私たちの競技中は、そういうこととは違って、高いスキルを発揮して、時には危険性もあるときにレオタードがずれていないか、誰かに写真を撮られていないかなどと考えてしまうのです。それは自分が自分の体をどう感じるかという問題とは少し違うと思うんです」

 危険を伴う競技だからこそ、安全性も考慮されるべきだし守られるべきという大前提があるなかで、レオタードでは不安だった、というのは大いに頷ける話だ。

ユニタードだから表現できた「Queen」の世界観

 ユニタードの導入は、そうした安全面や、様々な目線からの不安の解消という意味を持つだけではない。もっともっとポジティブな副産物をもたらしてくれた。

【次ページ】 選ぶのも、守るのも自分自身である

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