バスケットボールPRESSBACK NUMBER
「チームメイトにも相談できなかった……」川崎から広島へ移籍、31歳・辻直人が語った“本当の理由”とは?
text by

ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph byKAWASAKI BRAVE THUNDERS
posted2021/07/06 17:01

川崎ブレイブサンダースから広島ドラゴンフライズに移籍した辻直人
ここ数年、辻はオフシーズンに入るやいなや、専門のスキルコーチについてもらい、「スキルワークアウト」に汗を流すことが日課になっている。『個』の能力を上げるためだ。広島にわたってからは、シーズン中であっても、チーム練習に加えて「スキルワークアウト」に取り組むことを認めてもらっている。NBAではあたりまえにいるスキルコーチも日本ではまだ多くない。ならば、個人的に依頼して、成長の糧にする。
「今の若い子たちはそういうトレーニングに触れる機会も少しずつ増えているかもしれないけど、僕らの世代は高校や大学でそういうものを教わってきていません。
でも、だからこそ意味があって。僕は31歳ですけど、そういうトレーニングによる『伸びしろ』があると思っているので。僕は、もっと、もっと、上手くなりたいんですよ」
「大丈夫だよ! ボクが頑張ればイイだけだから!」
ADVERTISEMENT
昨シーズンの最終盤。移籍することをほぼ決めたあとのこと。
家族と足並みをそろえて新たなステージに向かいたかったし、子どもの環境が変わることへの心配もあったし、ひょっとしたら背中を押してもらいたかったのかもしれない。辻は、決断の前に長男にたずねることにした。「広島に行くことになっても、大丈夫かな?」と。
「大丈夫だよ! ボクが頑張ればイイだけだから!」
人生の大先輩みたいな発言やん。そんなことを言ってくれる5歳児なんて、コイツ以外にどこにおるんや……。
隣で聞いていた妻とともに、内からあふれるモノをこらえながら、辻は愛息に宣言した。
「じゃあパパは……それ以上に、もっと頑張るからね」
