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「チームメイトにも相談できなかった……」川崎から広島へ移籍、31歳・辻直人が語った“本当の理由”とは?
text by
ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph byKAWASAKI BRAVE THUNDERS
posted2021/07/06 17:01
川崎ブレイブサンダースから広島ドラゴンフライズに移籍した辻直人
「なかなか相談できなかった」
辻からすれば、キャプテンが思いやりにあふれた人間だと知っていたからこそ、交渉をしている間は相談できなかった。
「シーズン中には、選手が自分のプレーについて悩むこともあります。まして交渉が進むのって、シーズン終盤の大事な時期ですよね。そこで僕が個人的な話をしてしまうと、それによって不安や余計なストレスを与えてしまうんじゃないかと思って。だから、なかなか相談できなかったんです」
それでも、決断してからは、真っ先に自分の口から伝えるべきだと考えた。4月の終わりのころだと辻は記憶している。キャプテンで1年先輩の篠山と、同期入団の長谷川技に決断を伝えた。生え抜きとして長年チームを引っ張ってきた3人で涙を流したのはそのときだった。
「ずっと戦ってきた仲間だったから。僕の口からきちんと事情を伝えた上で、『だからこそCSで優勝するために全力をつくしたい』と話したんですけど……」
「代表に行って、改めてそう思ったんです」
7月5日に発表された東京オリンピックの日本代表のメンバーには入れなかったが、辻の歩みは止まらない。いや、止まってなどいられないのだ。成長したいという想いから川崎を離れることにした今は、その成長を加速させようとしている。
「上を目指すなら、日本代表で活躍したいと思うなら、『個』で打開する力というのが絶対に必要です。でも、Bリーグでは、外国籍選手や帰化選手に頼っていれば自然と点がとれます。だから、そのことにはなかなか気づけなくて。
例えば、田中(大貴)選手はアルバルク東京にいるときから、自分が起点になってピック&ロール(*マークのズレを発生させるためにしかける、現代バスケのオフェンスの基本戦術)もするし、自らアタックもしますよね。普段からやっているから、代表でも同じプレーができる。外国籍選手を活かす判断力を磨くのも大事ですけど、もっと『個』のレベルを上げないと、選手として上を目指すのは難しい。代表に行って、改めてそう思ったんです」