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「チームメイトにも相談できなかった……」川崎から広島へ移籍、31歳・辻直人が語った“本当の理由”とは?
text by
ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph byKAWASAKI BRAVE THUNDERS
posted2021/07/06 17:01
川崎ブレイブサンダースから広島ドラゴンフライズに移籍した辻直人
「憎まれ役になってしまうかも」という心配もあったが、辻は伝えた。アウトサイドの選手に一方的に責任があるかのような発言だけをしていては、お互いにリスペクトができなくなるし、チームが一つになれないのではないか、と。
「全体をまとめるときには(キャプテンの)竜青さんが良いことを言ってくれるので、ああいうときにハッキリ言うのは僕かなと。もしかしたら外国籍の選手たちには『こいつ、何を言ってるんだ?』とか思われるかも知れないし、シンドイ役割ですけど、それは僕の仕事かなというか……」
当時、辻はそう振り返っていた。なお、このときは辻の言葉をきっかけに、ヘッドコーチを含めてそれぞれの立場から意見がかわされ、最後は一つの結論にいたった。
「攻撃が上手くいかないときはある。でも、ディフェンスで我慢すれば、絶対に自分たちの流れは来るから。だから、ディフェンスを第一に考えて戦おう!」
スサノオマジック戦のロッカールームで
話し合いの効果は確かにあった。そこからレギュラーシーズン終了まで7連勝。そのなかには昨シーズンの王者・千葉からの2連勝、レギュラーシーズン最高勝率の宇都宮ブレックスからの2連勝も含まれていた。
秋田戦だけではない。昨シーズンの中盤まで苦しんでいた川崎の浮上のきっかけとして挙げられることの多い、1月の島根スサノオマジック戦。あの試合後のロッカールームでも腹を割った話し合いが行なわれたが、議論の口火を切ったのは辻だった。
「『チームはこうやって良くなっていくんだ』というのを9年目にして初めて、心から実感できたシーズンだったんです。チームがバラバラになりそうなときもあったけど、選手同士で話し合い、スタッフとも話し合いました。しかも、うわべだけの話し合いではなく、自分の考えや腹の中をきちんと伝えあえた。選手の考えをコーチングスタッフが聞いてくれたこともあって、スタッフも含めてみんなでチームを良くしていこうという姿勢があった。それはすごく良かったと今でも思うんですよ」