ハマ街ダイアリーBACK NUMBER
山崎康晃「一度も口にすることはありませんでした」“屈辱の1年”を経験した28歳が明かす“クローザーへの想い”
posted2021/05/08 06:01
text by
石塚隆Takashi Ishizuka
photograph by
KYODO
雄々しい姿がマウンドで躍動する――。
今シーズン、セットアッパーとして活躍する横浜DeNAベイスターズの山崎康晃のピッチングから目が離せない。ここまで11試合連続無失点を含む18試合に登板し防御率1.56(データは5月5日現在)と抜群の数字を残し、勝ちパターンを中心にチームにポジティブな流れを呼び込む投球に終始している。山崎は、今季の自分自身について言葉に力を込めて語る。
「(セットアッパーとして)1回目の歯止めだと思って投げていますし、8回だからこそできることもあり、非常にいいカタチで表現できていると思います。例えばビハインドはもちろん同点の場面で投げるのならば、球場の雰囲気をガラッと変えるようなピッチングを意識したりしていますね」
“復活”ではなく“新しい山崎康晃”へ
5月2日のヤクルト戦では8回表、同点の場面でマウンドに上がるとサンタナを三振、西浦直亨を内野ゴロ、そして川端慎吾を外角低め一杯のストレートで3球三振という圧巻のピッチングで仕留めている。その後、横浜スタジアムのムードが変わった裏の攻撃において桑原将志が決勝ホームランを放ち、山崎は2勝目を挙げた。
投球内容からは昨年までと異なる様子が多々見られ、これは“復活”ではなく“新しい山崎康晃”なのではないか、と本人に問うと、しばし考え口を開いた。
「ええ。今季は初めてファームのキャンプからスタートして仁志(敏久・ファーム)監督から『今までのヤスアキを取り戻すというより、“進化”してシーズンに挑んで欲しい』と言われました。それをどう表現しカタチにしていくのか。そういった意味では“進化”ということにここまでフォーカスしながらやってこられたと思います。なにが正解なのかはわかりませんが、違った武器を持つなど、自分の能力をこれまで以上に引き出し抑えていければなって」
聖域を追われた“屈辱の1年”
“復活”ではなく“進化”――。
過去2年連続セーブ王に輝くなど球界を代表する投手として華々しい活躍をしてきた山崎であるが、昨シーズンは未曽有の不調に陥った。コロナ禍により例年とは異なる調整状況があったことで、開幕当初から不振を極め、度重なる救援失敗により、聖域だったクローザーの立場を追われてしまった。その後、敗戦処理などをこなすも調子は一向に上がらず、プレーオフの調整以外では初めてファームへ行くことになるなど、いわば屈辱の1年だった。