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山崎康晃「一度も口にすることはありませんでした」“屈辱の1年”を経験した28歳が明かす“クローザーへの想い”
text by
石塚隆Takashi Ishizuka
photograph byKYODO
posted2021/05/08 06:01
ルーキーイヤーからクローザーを務め、18、19年はセーブ王。プロ入り後初の不振による降格も経験した昨季から一転、今季はセットアッパーとして新たな姿を見せている
「マスコミからは新しい変化球をフォーカスされたり、復活のカギは落ちの浅いツーシームとか書かれたりしますが、僕自身は一貫してストレートの質を追い求めてここまで過ごしてきました。ファーストストライクをテーマに、どうすればピッチャーに有利な状況を作ることができるのか、いかに四隅に投げきることができるのか」
ストレートが良くなれば当然、変化球は活きてくる。とくに今季は、昨季後半から使い始めた130キロ台後半のカットボールが新たな武器として高い精度で活用できるようになった。
「昨季はいい使い方をすることができなかったのですが、今季は自信を持って投げられています。ツーシームと“対”になるように意識して投げていますし、ストレートを活かす変化球になればなって」
ストレートの軌道から同じ速度帯で“対”に変化するツーシームとカットは山崎の新たな武器となっており、2ピッチから抜け出したという意味では進化した部分だと言えるだろう。またチェンジアップやカーブといったボールも過去試しており、ゆくゆくは緩急を武器にすることもイメージしているという。
「今までやってきたことや努力を無駄にすることなく、成長に繋がるようにアプローチしていきたいですよね」
不調から一度も口にしなかった「クローザーへの想い」
一皮むけた感のある山崎ではあるが、気になるのは、クローザーへの想いである。現在チームでは山崎の不振を受けて昨季から三嶋一輝がクローザーを務めており、これ以上ないほどの働きをしている。山崎は現在のセットアッパーという役割に意義を見出し取り組んでいるが、1年ほど前まで「クローザーというポジションを譲りたくないし、自分があそこで投げるんだという気持ちを常に持っている」と語っていた。実績を考えれば当然ではあるが、しかし不調に陥り、塗炭の苦しみを味わってからは、悔しさは口にしてもクローザーに関し言及することはなかった。
あらためて問うと、山崎は熟考し噛み締めるように言った。
「これまで色んなところでそれについて訊かれましたが、一度も想いを口にすることはありませんでした。それこそ三嶋さんをすごくリスペクトしていますし、ブルペンでも刺激を受け、前(8回)を投げさせてもらっています」
ひと呼吸置き、つづける。