2020年M-1・全員インタビューBACK NUMBER
<あの日のかな~>おいでやすこが運命変えた4分間「カラオケネタは1秒変わらず間(ま)が決まっています」
text by
中村計Kei Nakamura
photograph byKeiji Ishikawa
posted2021/04/21 11:02
おいでやす小田(右、ツッコミ担当、42歳)とこがけん(ボケ担当、42歳)
小田 なかったな、やっぱり。R-1の決勝の舞台に5回も立たせてもらっていた経験もでかかった。それまでの僕にとっては、それがすべてだったので。
こが 僕も緊張感はなかったですね。すごい集中している感覚はありましたけど。
――大宮ラクーンよしもと劇場で初めてやったという漫才ネタと同じく、M-1の1本目のネタも、もともとあったこがけんさんの歌ネタを漫才にしたものなのですか。
こが あれは平場(トークの場)用に持っていたもので、ネタにしていたわけではないんです。ちょっと振られたときに、出だしは誰でも知ってるけど、途中から知らなくなる歌をやります、みたいなノリで歌って、МCの人に「なんや、その曲」って言ってもらうためのものというか。それを今回は小田さんがいたので、ネタにできるなと思って。
――あれは1人では成立しない芸なわけですか。
こが しないでしょうね。よく聞いたら知らない歌っていうボケをずっとやっているだけなので、説明がなかったら、お客さんはついてこれない。でも、僕が説明し過ぎたら、白けてしまうと思うんです。そこへ行くと漫才はすごいなと思いましたね。ひとっとびで設定が伝えられる。小田さんが「なんや、その歌!」とツッコむだけでいいんですから。
「原っぱで友だちを笑かせる2人組が最強なんです」
――小田さんがよくおっしゃられている「ピン芸とピン芸の融合」という言葉の意味は、そのあたりにあるのでしょうか。
小田 現代の漫才のもとをたどれば、それは喫煙所だったり、電車の中で、誰かと誰かが話していて、横で聞いてたらむちゃくちゃ笑える、みたいなものだと思うんですよ。だから劇場で、音楽が鳴って、大勢のお客さんの前で、照明を浴びながらやるなんてのは、ほんまは不自然だと思うんです。本来、原っぱで、友だち数人でもいいから、会話だけで腹の底から笑かせられる2人組が最強なんですよ。それが漫才やと思う。ただ、僕らにはそれはできないので。漫才はよく「1+1」が2ではなく、3にでも4にでもなると言いますよね。でも僕らはあくまでピン芸とピン芸の足し算です。
こが いわゆる漫才師っぽい掛け合わせみたいなものには頼れない。ただ、個のパワーが大きければ、足しただけでも答えはどんどん大きくなっていきますからね。
小田 僕らはよくも悪くも、相方はこいつじゃないとあかん、みたいなのはない。他のコンビは個々のパワーもある上に、そこに相性という力も乗っかっている。でも僕らはどこまでも個々のパワーだけで勝負しようと思った。
関根さんも絶賛してくれた
――でも結果、それが大成功した印象ですよね。「5+5」で10にしたというか。