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【松山英樹マスターズ優勝】「ザ・マツヤマ」という名のショータイム…見事な勝ちっぷりを予感させた変化とは?「自分が正しいと思い過ぎていた」 

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舩越園子

舩越園子Sonoko Funakoshi

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photograph byGetty Images

posted2021/04/12 11:03

【松山英樹マスターズ優勝】「ザ・マツヤマ」という名のショータイム…見事な勝ちっぷりを予感させた変化とは?「自分が正しいと思い過ぎていた」<Number Web> photograph by Getty Images

悲願のマスターズ優勝を達成した松山英樹。ローアマ獲得から10年、日本人初の快挙だった

 2013年に米ツアーに挑み始め、2014年から正式デビューした松山は、早々にメモリアル・トーナメントを制して初優勝を挙げ、2016年にはフェニックス・オープンとHSBCチャンピオンズで勝利。2017年にはフェニックス・オープンを連覇し、世界選手権シリーズのブリヂストン招待でも勝利して米ツアー通算5勝を達成した。

 その勢いのまま、翌週は全米プロで優勝争いに絡み、メジャー初優勝ににじり寄った。しかし、最終日の後半にガラガラと崩れ、ジャスティン・トーマスに勝利を奪われた。

 それからの松山はメジャー大会でもレギュラー大会でも勝てなくなった。当然ながら「なぜ勝てない?」「どうしたら勝てる?」という自問自答が始まった。

 松山が目指していたのは「アイアンで構築するゴルフ」だった。正確なアイアンショットを身に付ければ、それが土台になる。頑強な土台作りを目指して、彼は黙々と練習に打ち込み、その一方で、ドライバーショットも小技もパットも、結局、すべての精度とグレードを上げることに躍起になり、限りなくパーフェクトを目指すことを彼は頑なに続けていった。

 彼のそんな姿は苦しそうで、ときには空回りや独りよがりにも見えた。だから「スイングコーチを付けてみたら?」「メンタルトレーニングを受けてみる気はないか?」と取材の合間にさりげなく尋ねたが、「自分のスイングは自分が一番わかっている」と彼は言い張った。

 自分の考えに忠実で頑なで、とにかく松山は、ひたすら頑固だった。

 だからこそ、そんな松山が2020年の末にスイングコーチを付けたことは、大きな変化であり、大きな驚きだった。

優勝から遠ざかったが、トップ30を割ったことはない

 2017年の夏以来、勝利から遠ざかってきた4年間は、これといった大活躍がない代わりに、スランプと呼ばれるほどの不調でもなく、世界ランキングもフェデックスカップランキングもトップ30を割ったことはない。ピラミッドの上層階に居続けることは、それだけでも偉業で、プロゴルファーを名乗る世界中の大勢の選手たちが羨望の目を向ける立ち位置だ。

 しかし、メジャーで勝つこと、マスターズで勝つことを幼いころから夢見てきた松山にとっては、そこに居続けることはプロセスに過ぎず、夢の途上で立ち往生していたことに彼が満足するはずはない。

 どうしたら前進できるのか。どうしたら再び勝てるのか。葛藤を続ける日々は頑なだった彼の心を少しずつ解きほぐしていったのだろう。それまでは拒み続けてきたスイングコーチを付けてみようと思い立ち、米国でゴルフの指導法を学んだ目澤秀憲とコーチング契約を結んだ。

【次ページ】 「自分が正しいと思い過ぎていた」

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