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居場所がないマッチョを救いたい…シドニー五輪銀メダリスト永田克彦(47)が「限界まで筋肉」を目指すジムを開いたワケ 

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高木圭介

高木圭介Keisuke Takagi

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photograph by Ichisei Hiramatsu

posted2021/04/09 11:00

居場所がないマッチョを救いたい…シドニー五輪銀メダリスト永田克彦(47)が「限界まで筋肉」を目指すジムを開いたワケ<Number Web> photograph by  Ichisei Hiramatsu

4月にオープンする『MUSCLE-WIN』でトレーニングを披露した永田克彦。47歳となった今もその肉体に衰えは感じさせない

 専門性を売りとする『MUSCLE-WIN』にて、使用されるバーは1本=20kgのオリンピックバー、プレートも直径45cmに統一されたオリンピックプレートで統一。カラーリングもウエイトリフティング競技仕様と同一で揃えられている。ベンチプレスやスクワットだけでなく、本格的にデッドリフトも行えるプラットホームも完備。スクワットラックの耐荷重量は500kg以上という頑丈さだ。またケトルベルやバトルロープなど、一般人はまず目にすることはない器具も置かれている。

 多くのトレーニングジムはビルの2階以上に設置されていることが多く、耐震や建物のメンテナンス等を考慮して、高重量を扱ったり、運動後にバーベルを地面に落下させてしまうことも多いウエイトリフティングの全身運動、クリーンやスナッチを実施することは嫌がられる傾向にある。

 コロナ禍の現在はもちろん、その前から一般のジム内では気合で大声を出すことも迷惑行為とされてしまう。そんな“マッチョ難民”救済も、ジム設立の大きな目的だ。特に高重量のフリーウエイト器具などは、自宅に置くのもまず無理ならば、お手軽な駅前ジムには設置されていないことがほとんど。結局は大学などの専門施設に頼らざるを得ない部分が大きく、大学卒業後は泣く泣く競技生活を諦めざるを得ない人材も多いのである。

「うちのジムは1階にありますし、『声だし』もOKですよ。重たい重量を扱う時には、むしろ声を出さないと血圧も上がってしまうし、身体にもよくない。本格的に筋肉強化に励んでいる人たちほど、肩身の狭い思いをしている現状をなんとかしたかった(笑)。あと、うちのジムは常に補助をするスタッフが常駐しているので、安心して限界値に挑むことができるのもウリです」(永田)

「メンテナンス作業こそが筋トレ」

 永田は筋肉をクルマのエンジンに例えつつ、「筋肉とはエンジンでいう出力部分。そこを定期的にメンテナンスしておけば、競技寿命も延びますし、日常生活の動作一つとっても段違いに楽に、スムーズになる。そのメンテナンス作業こそが筋トレなんです」と力説。国内最大手の新日本プロレスで最年長現役レスラーとして活躍する兄(永田裕志)も、リング上の戦いをもってアンチエイジングを訴えているが、弟は高重量の筋トレをもって、その考えを普及させていく構えだ。

 2020年にWHO(世界保健機関)が発表した平均寿命ランキングによると、日本人の平均寿命は84.2歳。今や「人生100年時代」が本格的に到来しようとしている。この事実に対して、そろそろ「そこまで長生きできたらいいな」ではなく、具体的に「どうやって100年を快適に過ごすか?」を真面目に考えなければならない時期が来ている。

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永田克彦

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