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留学も英才教育もなし…それでも“世界4位になった”伊達公子に聞く「部活から世界に羽ばたくことは可能ですか?」 

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内田暁

内田暁Akatsuki Uchida

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photograph byYuki Suenaga

posted2021/04/05 18:41

留学も英才教育もなし…それでも“世界4位になった”伊達公子に聞く「部活から世界に羽ばたくことは可能ですか?」<Number Web> photograph by Yuki Suenaga

元プロテニスプレーヤーで現在はジュニア育成に力を注ぐ伊達公子氏と、日本テニス協会名誉顧問の盛田正明氏の対談が実現した

「環境だけではないと思うんですよね。私が部活動を経験したからという理由だけでもないし、今の子が当時の私と同じルートをたどったとしても、同じようになる訳ではない。そこには、(園田学園テニス部監督だった)光國(彰)先生がいたり、光國先生が病気をしたことで小浦(武志)さんとの出会いがあったり。単に『部活動』の一言では語りつくせないものがあるから、今の私が存在するわけで、まったく同じ環境をそのまま誰かに当てはめても、同じ結果になるわけではないと思います。

 それは、時代が違うから無理なのかということでもないでしょう。10人いれば10人の道があり、私の性格もある。同じように光國さんと小浦さんに教わっても同じようになるわけでもないし、出会うタイミングが違えば、また違う展開になるでしょうから」

 園田学園の黄金時代を築いた光國氏から、伊達は在学中も「勝たんでええ」「高校時代はダメでもええ」と言われてきたという。当時はその真意を測りかねたが、今では、将来を見越し大きな器を用意してくれていたのだと分かる。

 またコーチの小浦氏は、情報を得にくい時代にも世界にアンテナを張り巡らせ、最先端の高価なトレーニング器具を、伊達のために購入したこともあるという。

 個性的な名伯楽たちとの出会い。そして与えられた情報や指導から、自分に必要な要素を取捨選択する嗅覚と判断力——必ずしもエリートではなかった少女には、それら稀有な資質が備わっていた。

2人が共感する「コーチがずっと同じではダメ」

 コーチということで言えば、前述した盛田氏の「セオリー」に、次のようなものがあるという。

「私のセオリーには、コーチがずっと同じではダメというのがあります。学生でも、小学校では小学生を、高校では高校生を教える先生に習わなくてはいけないのに、テニスではコーチがずっと手放さないでしょ? あれでは強くなれないと、私はかねがね思っているんです」

 その盛田氏のセオリーを裏付ける究極の成功例が、錦織圭だ。

「錦織圭が強くなれたのは、コーチをその時々で替えていったから。彼の場合は、コーチの上にもう一人マネージャーが居て、その人がアレンジしてくれたんです。コーチを替えるたびに、圭はステップアップできた。ただ日本にはその役職がいないので、コーチがずっと抱え込んでしまう。これでは、小学校の先生が大学まで教えているようなものだと感じています」

 この意見に「同感です」とうなずく伊達の言葉に、盛田氏は確信めいた口調で応じた。

【次ページ】 盛田氏「だから伊達さんは例にならない」

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