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伊達公子が聞く、錦織圭を輩出した“盛田ファンド”のジュニア育成術「日本では良いテニスをしても、海外でダメになる子もいる」
posted2021/04/05 18:40
text by
内田暁Akatsuki Uchida
photograph by
Yuki Suenaga
テニス界の重鎮であるため、伊達さんも「ダメ元」だったというが、貴重な対談がついに実現。ここではそのさわりや番組に入りきれなかったエピソードを紹介するとともに、対談後に行った伊達さんのインタビューを公開する。(全2回の1回目/#2へ)
かつて、世界の4位まで上った『世界の伊達公子』が、顔中に笑みを咲かせ「盛田さん」と向き合っていた。
「ぜひ、盛田さんにお話を伺いたかったんです」
2000年から2011年まで日本テニス協会会長職にも就いた盛田氏の功績は、盛田正明テニスファンド(以下MMTF)の設立でも広く知られているだろう。
錦織圭を筆頭に西岡良仁ら、現在世界ランキング上位に名を連ねる日本男子のフロントランナーは、いずれもMMTFの支援を受けていた。その優れた育成システムは、どのように生まれ、いかに運営されてきたのか? そして創設の背景にある、盛田氏の情熱や理念とは何なのか?
ソニー退職後に立ち上げた「盛田正明テニスファンド」
約2年前に、自らもジュニア育成プロジェクトを立ち上げ、今年2月にその一期生を送り出したばかりの伊達は、育成の難しさに直面し、悩み、迷いもしたのだろう。盛田氏に質問を投げかけ、その返答を一言も聞き漏らすまいとばかりに身を乗り出す姿には、日本テニスの未来への切なる願いが溢れていた。
日本のテニス界を盛り上げたい、世界で戦える選手が出てきて欲しいという切望は、伊達と盛田氏を結ぶ最大の共通項だ。
学生時代はバレーボールに青春を捧げた盛田氏の、テニスとの出会いはソニーに入社後のこと。始まりは単に、気分転換を兼ねたリクリエーションだった。
たが、やがて海外出張が増えていくと、欧州を発祥としアメリカで栄えたこの球技が、欧米では格好のコミュニケーションツールにもなると気づく。何よりコートに立ってボールを打てば、仕事の疲れも異国で過ごすストレスも、汗とともに流れ落ちた。
「これは良い! テニスは、頭の薬だ!」
出張先にラケットを持ち歩き、グランドスラムも現地観戦するようになった盛田氏は、ある頃から、世界で活躍する日本人選手の出現を強く願うようになる。
その夢を叶えるべく退職後に立ち上げたのが、有望ジュニアを米国のIMGテニスアカデミーに留学させる、盛田正明テニスファンドだ。
「日本では良いテニスをしても、海外でダメになる子もいる」
そのファンドで支援するジュニアたちを、いかに選定してきたかという伊達の問いに、盛田氏は、「まったく分かりません。私はシステムを作っただけ。選ぶ目はありませんから」と朗らかに即答した。餅は餅屋ではないが、才能あるジュニアの発掘は信頼できるスペシャリストに一任するのが、盛田流の組織運営術。