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留学も英才教育もなし…それでも“世界4位になった”伊達公子に聞く「部活から世界に羽ばたくことは可能ですか?」
posted2021/04/05 18:41
text by
内田暁Akatsuki Uchida
photograph by
Yuki Suenaga
「まったくの例外。どうしてこういう人が生まれたのか? 私のセオリーにはまらない人です」
元日本テニス協会会長で、現在も、自ら立ち上げたテニスファンドを通じジュニア育成に尽力する盛田正明氏は、そう言い相好を崩した。
これまで、錦織圭や西岡良仁らをファンドの奨学生として世界に送り出した盛田氏には、その実績の集合知として、選手育成に一定の法則を見出したとの自負がある。その盛田氏をして、「まったくの例外」であり「私のセオリーにはまらない人」と言わしめた人物とは、かつて世界の4位まで上り、37歳での復帰後もツアー優勝など驚異の戦績を残した、伊達公子である。
海外留学経験もなかった少女が世界へ
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日本女子テニスが隆盛を極めた1990年代、伊達は“純国産選手”のパイオニアだった。
テニスを始めたのは、6歳の時。きっかけは両親がたしなんでいたためだが、あくまで趣味の領域で、本格的なプレー経験があった訳ではない。その娘である伊達も、テニスの名門・園田学園高校に進学するも、海外留学等の経験はなし。
そんな少女が、高校卒業と同時に世界に飛び出すと、プロ転向の翌年には全豪オープンベスト16進出の快進撃を見せたのである。そこからは、全米オープンベスト8に、世界ランキングトップ10入りと、彼女が走りぬけた道にはことごとく、「日本人初」のマイルストーンが刻まれた。
現在のように、どこに居ても家族や友人とつながっていられる時代ではない。世界が今より遥かに大きく、ツアーが孤独な戦場であった30年前に、海外生活の経験もエリート教育の経験もない伊達が成し遂げたことは、世界的に見ても異例だったろう。
高校の部活動から世界に羽ばたくことは可能か?
その規格外の元トッププレーヤーが、今、ジュニア育成に乗り出している。
15歳以下の女子を対象とした、トップジュニア育成プログラム『伊達公子×YONEX PROJECT』を立ち上げたのが、2年前。オーディションの末、第一期生に選ばれたのは4人という、少数精鋭での発進だった。
自身のジュニア時代の足跡や選手としての経験が、マジョリティではないとの認識は、伊達本人にもあるのだろう。
現在のテニス界においても、高校の部活動から世界に羽ばたくことは可能か? あるいは、伊達公子の成功は環境が大きかったのかという問いに、伊達は次のように明瞭に答える。