酒の肴に野球の記録BACK NUMBER
甲子園でヒジを壊した沖縄水産の“悲劇のエース”大野倫 「ぶっ殺す報道」の真相と恩師・栽監督の言葉とは
text by
広尾晃Kou Hiroo
photograph byKatsuro Okazawa/AFLO
posted2021/03/24 06:00
沖縄水産でヒジを痛めたものの、プロ入りして巨人・ダイエーなどにも所属した大野倫
「ヒジは痛かったのですが、極端に言えば左手だけで打っていました。バットのヘッドだけ利かして打つコツを覚えたんです。甲子園で打者としてやっていけるんじゃないかという思いができて、自分の意志として 打者としてやっていこうと思ったんです。
現役を引退してからは、投手としてやっていたらどうなっていたか、"違う方向を見たかったな"という気持ちは当然ありましたが」
「ぶっ殺す」報道に栽監督は笑っていた
筆者は高校野球の「勝利至上主義」に否定的だ。「球数制限」を導入すべきだと思うし、スパルタ指導はあってはならないと思う。しかし「今」の価値観で昔の日本野球を評して、後付けで否定するのは正しくないと思う。
日本野球は今から見れば、善悪、清濁、様々にはらみながら、ここまでやってきたのだ。過去にさかのぼって批判するのではなく、未来を志向すべきだと思う。大野倫氏の述懐は首肯できる。
「ぶっ殺す」発言が騒ぎになって、大野倫は栽弘義監督に謝罪に出向いている。
「栽先生は、"お前みたいに気が小さい奴が、そんなこと言うはずない"と笑っておられました。先生はよくわかっておられた。僕にとって栽先生は、未来を切り拓いてくださった恩師であることは今も変わりません」
(後編に続く。関連記事からもご覧になれます)
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