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藤井聡太二冠との対局は「ノーチャンス」… 中村太地七段が感じた「渡辺名人、羽生先生と似た」懐の深さとは
posted2021/03/15 17:16
text by
中村太地Taichi Nakamura
photograph by
Kyodo News/Nanae Suzuki
1年間かけて行われるリーグ戦の順位戦は、スポーツのリーグ戦日程のように、対局相手が始まる前にすべて発表されます。私の場合はそこで最終戦が藤井二冠と決まったわけです。対局が決まった当時、藤井二冠はタイトルを獲得する前でした。とはいえ、実力を伸ばしているのは明らかでしたし、超強敵ということで頑張らないといけない。ただその一方で非常に楽しみな思いでこの1年間過ごしてきました。
対局直前には対策・研究を非常に重ね、何十時間もかけて一生懸命臨んだ対局でした。対局結果は力及ばずでしたが――今回は藤井二冠との対局中の心理、そして藤井二冠の印象を、私の運営しているYouTubeチャンネルだけでなく、活字としても記録しておこうと思います。
序盤は割と想定した形で進んでいた
まずは時系列に対局を振り返っていきましょう。今回、私は後手番でしたが――序盤は、わりと想定した形で進みました。
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相掛かり(※お互いに飛車先の歩が進んでいく戦型)で進む中で私は昼食休憩の前、28手目に玉とは反対の方に上がる「7二金」という手を指しましたが、これが事前準備から考えていた作戦でした。ここから中盤に突入していくのですが――ここでの藤井二冠の対応が事前に想定していない柔軟な発想でした。そこから一手一手が非常に難しい将棋となり、構想力が問われる展開となりました。
いきなり激しい戦いになる変化が水面下でありつつ、じっくりとした戦いになる変化もある。この時間帯はお互い、長考が続いていました。積極的に行きすぎるとカウンターを浴びやすい、"ギリギリな間の取り合い"となり、両者時間を使うスローペースになりました。
当初私が描いたゲームプランは……サッカーで言えば「序盤に1点を先制して、そのリードを守りきって勝つ」というものでした。
そのためには序盤に持ち時間を使わずにいきたかったのですが、中盤で非常に時間を使うことになったのが、少しずつ響いていったかなと感じています。