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8時間睡眠と日本食で“心身を整え”、ドイツ語も「お堅いけど」流暢… 長谷部誠は“969歳の聖人級”に愛される 

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島崎英純

島崎英純Hidezumi Shimazaki

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photograph byToshiya Kondo/Getty Images/Takuya Sugiyama

posted2021/03/13 17:03

8時間睡眠と日本食で“心身を整え”、ドイツ語も「お堅いけど」流暢… 長谷部誠は“969歳の聖人級”に愛される<Number Web> photograph by Toshiya Kondo/Getty Images/Takuya Sugiyama

浦和でもフランクフルトでもボルフスブルクでも、主力であり続けた長谷部誠はやはり偉大である

 つまり、僕のことを日本人と認識してもイコール「マコト・ハセベ」に至らないのは、それだけ長谷部がこの街の人々に受け入れられている証拠だと思うのです。

地元紙が「日本人」と明示しない理由

 現地紙の長谷部に対する記述にも特徴があります。

 フランクフルトの地元紙である『フランクフルター・ルントシャウ(Frankfurter Rundschau)』のインゴ・デゥルステビツ記者は署名記事で長谷部の契約延長ニュースを伝えましたが、インゴ記者は「日本人」という単語を使わず、37歳のチームキャプテン、もしくはMFティモシー・チャンドラーと並んで現在最もクラブ在籍年数が長いプレーヤーと記していました。

 ちなみにインゴ記者と僕は仕事上の関係でお付き合いがあるのですが、彼は常々「自分の息子も将来、マコトみたいな人物になってくれたら嬉しいなぁ」と語り、一個人として長谷部に対する尊敬の意を表しています。

 とはいえ、他のドイツメディアは長谷部のことを「ヤパーナー(日本人)」と記述しているケースが多いようです。しかし、少なくとも地元フランクフルトでは長谷部は明確にアイントラハトの一員とみなされているのです。

“969歳の聖人”はドイツ語も流暢……お堅いけど

 ちなみに、ドイツ有数のサッカー専門誌『Kicker』が長谷部に対して付けた呼称は「メトシェラ」です。「メトシェラ」は旧約聖書の創世記に登場する人物で、969歳という長寿をまっとうして逝去した方だそうです。

 また、長谷部が流暢にドイツ語を操る点も、彼が現地に溶け込めている理由でしょう。ブンデスリーガ第22節バイエルン・ミュンヘン戦を勝利で飾った後、地元放送局『スカイ』のインタビューを受けた長谷部は、矢継ぎ早に質問を発するレポーターにしっかりと受け答えしていました。

 本人はよく「ドイツ語を習い始めたときに、もっとちゃんと勉強しておけばよかった」と言っていますが、何の問題もなくコミュニケーションが取れる点は地元の方々の信頼を得る大きな要因になりますし、なにより長谷部のドイツ語は日本語と同じく丁寧で実直な印象を受けます。ドイツ人の友人の中には「マコトのドイツ語はすごくお堅いけどね」と言う人もいますけど(笑)。

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