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8時間睡眠と日本食で“心身を整え”、ドイツ語も「お堅いけど」流暢… 長谷部誠は“969歳の聖人級”に愛される
posted2021/03/13 17:03
text by
島崎英純Hidezumi Shimazaki
photograph by
Toshiya Kondo/Getty Images/Takuya Sugiyama
2021年3月8日。ドイツブンデスリーガのアイントラハト・フランクフルトに所属する長谷部誠は、今年6月30日まで結んでいたクラブとの契約を更新しました。新しい契約は来年6月30日までの1年間となります。
今回の長谷部の契約更新は、すでに現地紙『Bild』が1週間ほど前に独占で報じていて、「3月7日までには発表があるだろう」とされていました。結局『Bild』の予想は1日だけ外れてしまったわけですが、いずれにしてもクラース・ヤン・フンテラール(シャルケ、37歳7カ月)に次ぐ年長者である長谷部(37歳1カ月)が、ドイツのトップカテゴリーにおいて純然たる戦力として認識されている事実に、改めて畏敬の念を抱きます。
そんな長谷部の契約更新に関するニュースはすでに日本でも飛び交っているようなので、本稿ではフランクフルト在住である筆者が感じる、フランクフルトにおける長谷部の存在、あるいはドイツ人の評価をクローズアップしたいと思います。
海外の方は、外国人に対して親しみの意を込めてその国の有名人の名前を発することが多いと思います。僕自身、スペイン・マラガ中心部の丘の上で「シンジ・オノ?」と声をかけられたことや、トルコのブルサという街にあるハマム(公衆浴場)の受付にいたお兄さんに「ツバサ!」と呼ばれたことがあります。最近ではロックダウン前の近所のバーで男性からおもむろに「キメツ」と囁かれ、日本の漫画への関心の高さに驚きました。
フランクフルトでは「ハセベ!」と声を掛けられない
ただしコロナ禍以前のフランクフルトの街中で、オープンテラスのカフェでコーヒーを嗜んでいるときなどに「ハセベ!」と声を掛けられたことはありません。
大前提として僕と長谷部の容姿は似ても似つきませんが、フランクフルトの街で一度も「ハセベ!」と言われたことがないのは、以下の理由からではないでしょうか。
フランクフルトにおいて長谷部の認知度が高いのは当然で、そのうえフランクフルトは国内有数の国際ハブ空港を構えるドイツの玄関口で、多様な人種や文化が共存しています。したがって、この街の方々は外国人に過剰な反応を示さない傾向があるように思うのです。
さらに、ここが最も重要だと思うのですが、長谷部は2014シーズンからアイントラハトに在籍する経験豊富なブンデスリーガーで、この街の人々およびサポーターにとっては良い意味で愛する我がクラブの一員に過ぎないのです。