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8時間睡眠と日本食で“心身を整え”、ドイツ語も「お堅いけど」流暢… 長谷部誠は“969歳の聖人級”に愛される
text by
島崎英純Hidezumi Shimazaki
photograph byToshiya Kondo/Getty Images/Takuya Sugiyama
posted2021/03/13 17:03
浦和でもフランクフルトでもボルフスブルクでも、主力であり続けた長谷部誠はやはり偉大である
規則正しい生活、日本食、8時間睡眠
長谷部自身は長く現役生活を続けられる理由として、規則正しい生活を挙げています。とりわけ睡眠と食事の重要性はたびたび語っていて、昼寝に加えて8時間の睡眠、そして日本食がいかに健康に良いかを力説しています。
クラブの公式ビデオには自身お気に入りの日本食レストランで料理の数々を紹介しつつ舌鼓を打つシーンがあり、その日本食レストランは地元ドイツ人にも親しまれる超人気店となっています。
とはいえ、そのお店で街の人々が長谷部と遭遇したとしても、彼らはTPOをわきまえてほとんど声をかけることがないといいます。その振る舞いは他の選手に対しても同様です。
僕が住む家の近所にはアイントラハトの東欧出身選手行きつけの美容院があるのですが、全面ガラス張りの小さな店でフィリップ・コスティッチやルカ・ヨビッチが散髪していても、ここの住人は「今日も元気に髪を切ってんな」という感じで平然と素通りしていくのが常です。選手を煩わせるようなことをして、プレーパフォーマンスに影響を及ぼしたら本末転倒。それがこの街の人々の、我がクラブの選手に注ぐ愛情表現なのです。
「ハーゼには静謐さと経験が備わっている」
長谷部の契約更新に関しては、称賛のコメントが並んでいます。
「なんていいニュースなんだ!」といった定型文を始め、「ピッチでもプライベートでも常に自身を律するハーゼ(長谷部のあだ名)が長くプレーし続けられるのは当然のことだ」という立ち居振る舞いに関する賛辞もありますが、僕が最も心に響いたあるサポーターの感想は以下のものでした。
「ハーゼには静謐さと経験が備わっている。彼が中盤に居ることで、アンドレ・シルバ、ダイチ・カマダ、コスティッチ、アミン・ユネスらの攻撃陣が躍動できる。もしアイントラハトがハーゼを失ったら、かつてウーベ・バインがクラブを去ったときと同じくらいのダメージを被るだろう」