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「そんなお金があるなら、復興に使って欲しい」…あれから1年半、釜石“復興”スタジアム(48億円)の今は?
text by
鼠入昌史Masashi Soiri
photograph byMasashi Soiri
posted2021/03/11 17:03
釜石の“復興”スタジアムへ。三陸鉄道に乗って鵜住居駅を目指す
駅前の高台から町を見下ろす小学校と中学校、震災前はちょうど鵜住居復興スタジアムの場所にあった。大槌湾のすぐそばという場所柄、小学校も中学校も、そして町も鵜住居駅も津波の被害にあった。その時に何が起こったのかは、「釜石の奇跡」「釜石の悲劇」で調べればいろいろな記事が出ている。ここではあらためて触れないが、少なくとも鵜住居の町は、震災でほとんどが流されてしまった。
鵜住居駅から、復興が続く町の中を少し歩き、線路を渡って鵜住居復興スタジアムを目指す。その途中にはたくさんの空き地。スタジアムの駐車場として使われているようだ。鵜住居川の向こうには大きな防波堤も見える。そしてスタジアムそのものも駅から見えているが、想像するようなどデカイ外壁で覆われた立派なものとは少し違う。
シンプルオブシンプルなスタジアム
よくイメージするスタジアム、たとえば新国立競技場などは実に立派で外から見ても迫力満点だ。ところが、鵜住居復興スタジアムの場合はほとんど何もない平らな場所に芝生が敷かれてゴールポストが建っているに等しい。常設のスタンドは、グラウンドを挟み込むようにメインスタンドとバックスタンドが設けられているくらい。その他の空き地には、ビッグゲーム開催時に仮設の観客席ができるのだろう。
メインスタンドの入り口は駅とは反対側にある。ぐるりとスタジアムを回り込むように歩いて向かってみよう。こちらもだいたいのスタジアムだったら、反対側まで歩くのに少なく見積もっても15分はかかる。チケットに記載されている入り口と180度反対の場所にいることがわかって絶望した経験がある人も多いだろう。ところが、その点でも鵜住居復興スタジアムは安心である。反対側まで歩いたところでものの5分とかからない。とにかく、シンプルオブシンプル、何も知らずにここを通りかかったら、ラグビーW杯の会場というよりは学校が部活で使うグラウンド?と思ってしまうほどのシンプルさなのだ。
「そんなお金があるなら、もっと復興に使って欲しい」
もちろん、これには立派な理由がある。