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「そんなお金があるなら、復興に使って欲しい」…あれから1年半、釜石“復興”スタジアム(48億円)の今は?
text by
鼠入昌史Masashi Soiri
photograph byMasashi Soiri
posted2021/03/11 17:03
釜石の“復興”スタジアムへ。三陸鉄道に乗って鵜住居駅を目指す
そうして12分、鵜住居駅に着いた。小さな島式ホームで線路は2つ。この区間はもちろん単線だから、列車交換(すれ違い)ができる構造になっているというわけだ。これを活かしたのかどうか、ラグビーW杯のときにはJR釜石線から三陸鉄道に乗り入れて鵜住居駅を通って大槌駅までの臨時列車「ラグビー釜石号」も運転されている。
訪れたのがごく普通の平日だったこともあって、鵜住居駅には人影がなかった。駅は必要最小限の設備といったぐあいで、ホームの上に小さな待合所がひとつある限り。ほかに駅舎のようなものも見当たらず、西側(山側)の駅前広場には小さな構内踏切を通って抜ける。
駅前に大きなラグビーボール
駅前広場はそのまま「うのすまい・トモス」と名付けられた施設につながっていて、そこには物産館や釜石市民体育館、そして震災の被害を伝える「いのちをつなぐ未来館」「釜石祈りのパーク」などがある。当たり前のことだが、どれもこれも最近できたばかりの真新しい施設だ。そして、その広場の真ん中には大きなラグビーボール。2019年のラグビーW杯の会場になったことを記念して設けられたもので、大漁旗や江戸時代から続く釜石の伝統芸能「虎舞」、釜石大観音などの“釜石らしさ”を織り込んだ印象的なデザインになっている。まさに、釜石、そして鵜住居のシンボルである。
ほとんど流された鵜住居の町
「うのすまい・トモス」を出ると、駅前には今も整備が続く住宅地。そして山の上の高台には鵜住居小学校と釜石東中学校が見下ろすように建っていた。鵜住居復興スタジアムがあるのは、こちらの駅前とは反対側、鵜住居川を挟んで大槌湾が広がる海の近くの一帯である。