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「プロ野球からやがてスカウトがいなくなる」は本当か? ある球団関係者「人件費の見直しを考えている」
text by
安倍昌彦Masahiko Abe
photograph byGetty Images
posted2021/03/05 17:25
「プロ野球からやがてスカウトがいなくなる」関係者の証言は本当なのだろうか? ※写真はイメージです
1つは球団がマークする選手たちの情報を、スカウト全員で共有するため。
すべての球団が全国を地区割りして担当制を敷いている今の状況で、たとえば、九州担当のスカウトが北海道の選手のプレーを見る機会はほとんどない。映像を共有することで、自分の担当地区の選手と比べることも可能になり、スカウト活動に役立つ。
そしてもう1つ。こちらのほうが大きな理由のようなのだが、ドラフト指名の決定権を持つ球団幹部に、スカウト会議で映像を見せて、その必要性を訴えるためだ。
もちろん、各球団のスカウト部長クラスの方も、全国を東奔西走して注目選手たちを見て回るのだが、例年200人近い「候補」がいれば、そう繰り返し見に行くこともできない。そこを補うのが、担当スカウト撮影による映像なのだ。
選手情報を集約する「スカウティング」企業が現れる?
マークする選手たちをそれぞれの担当スカウトが「プレゼン」を行ない、それを受けて、限られた数人の球団幹部が誰を指名するかを決める。そんな球団が、今は支配的なようだ。
「コイツだ!って思う選手は、なるべくたくさんいいシーンを撮りたいじゃないですか。練習試合に何度も足を運ぶのは、そのためなんですよ、僕の場合は」
複数のスカウトの口から、同様のコメントが発されたのを、私は聞いて知っている。
なんだか、変わってきてるんだなぁ、という一般的な感想と共に、ドラマもロマンもなくなっていきそうだなぁ……という、ちょっとしぼんだ思いにとらわれたことも間違いなかった。
12球団が同じようなことをしているのであれば、1つの企業が、選手情報を豊富に握る人間と、優秀なカメラマンと、撮影した選手たちの力量を正確に「言語化」できる説明能力を持つ者を揃える。そしてその「情報」を各球団のニーズによって提供すれば、「スカウト」という職分の人間は、それを補うためのほんの数人で十分だろう。
そのほうが球団にとってはリーズナブル、つまり「経済的」だという。
私に「スカウトという職業はなくなるのでは」と予言してくれたその人は、そうした「続編」を語ってくれた。
「数値で判断」アメリカのスカウト事情は?
すでにメジャーリーグには、かなり前の時代から「スカウティングビューロ」的な組織があって、全米の高校、大学球児の情報を球団に提供して、ビジネスとして成立しているという。