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兄・弟と一緒にオリンピック出場の快挙! 田中理恵が語る体操一家・田中家の教育法
text by
林田順子Junko Hayashida
photograph byKiichi Matsumoto
posted2021/03/03 11:00
オリンピック中継でロシアの選手を見て
ルールができてからは「こういう技をやってみたいんだけど、どうしたらできる?」と自分たちが聞きたいことを素直に聞けるようになったり、「今日はこの技ができたんだよ」って自慢をしたり、体操がさらに楽しくなりました。当時は気づいていませんでしたが、練習や試合でオンになって集中力を保つためには、このオンオフの切り替えがとても良かったと思います。
オリンピックを目指すきっかけとなったのは、シドニーオリンピックに出ていたロシアのスベトラーナ・ホルキナ選手をテレビで初めて見た時。立っているだけで絵になるような選手で、とてもキラキラしていて、この世界はなんなんだろうと衝撃を受けました。その時から私もオリンピックの舞台で演技をするんだという思いを持って競技を続けていました。
ところが中学3年生の時に怪我をしてしまって。身長は10cm以上伸びてしまい、体重も10kg近く重くなって、やる気がなくなってしまったんです。
イライラしながら過ごした高校3年間
一方で兄と弟はすでにジュニアナショナルで、日本代表となって海外にも行っている。私だけが結果が出ていなくて、ちょうど反抗期や思春期だったこともあり、「どうして体操一家に生まれたんだろう、体操の楽しさってなんだったんだろう」と自分を見失っていました。
だけど父は常に何も言わずに見守ってくれた。私がどれだけ練習でだらだらしていても父は「体操を楽しみなさい。人生は長いんだから体操競技を頑張りなさい」と冷静に教えてくれました。ただ当時の私はその意味をあまりわかっていませんでした。足首をずっと痛めていて、なかなか練習ができなくて、ずっとイライラしながら、ずるずると高校3年間を過ごしました。