弟に怒られて気づいたこと

　高校3年の冬に、大学に行くのをやめようかとか、地元で普通に働こうかとか色々進路について迷っていたんです。それまで一度もきょうだい喧嘩をしたことがなかったのですが、そこで初めて弟に「そろそろ真剣に体操をやりなよ」と怒られました。

　その時ものすごく自分のことを恥ずかしいと思いました。弟が思っているということは、両親はもっとイライラしているはず。それに気づかず、私は常に誰かのせいにしていた。だけど自分が変わらなければ、周りも変わらないと弟が分からせてくれたんです。

　後になって父に聞いたことがあります。反抗期の高校3年間の私をどう思っていたかって。

「反抗期の生徒や子供にガヤガヤ上からモノを言っても何も入らない。入らないし、言えば言うほど苛立ちが出てくるから、ああいう時は放っておくのが一番。理恵を見ていて、体操は好きなのにできないというモヤモヤも感じたので、怒ってはいけないと思った」と話してくれました。

　私自身、素直になれず、ずっとモヤモヤしていたので、何も言わなくても私の気持ちをわかっていてくれたんだというのは本当に感謝しています。

「自分に勝ちなさい、自分に負けるな」

　母にもどんな子育てをしたのか聞いたことがあるのですが、「適当よ～」という言葉しか返ってこないんです（笑）。ただ常に「何事も楽しみなさい。他人と比べるのではなく、自分に勝ちなさい、自分に負けるな」とは言われていましたね。

　2012年のロンドンオリンピックで、3きょうだいがなぜ揃って出場できたのかは分かりません。

　当時はそれぞれが好きな大学に行って、練習環境もバラバラでしたから。ただ、ひとつ理由があるとしたら、ただ体操が好きという気持ちを両親が育ててくれたからかもしれません。