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貧民街育ちの女性柔道家を金メダリストに… ブラジルで指導、藤井裕子監督に感じる“夫婦の新たな形”とは
text by
沢田啓明Hiroaki Sawada
photograph byAFP/AFLO
posted2021/02/24 17:12
ラファエラ・シルバと藤井裕子監督。厚い信頼関係で結ばれている
――昨年末、リオのマンション住民連合会が主催するフットボール大会に出場して大活躍。チームの準優勝に貢献し、最優秀右ウイングに選ばれています。
「地元の人たちと交流して、親しい友人ができた。彼らの考え方も、理解できるようになった。非常に貴重な経験をしていると思います」
――現時点では東京五輪が開催されるという確証がないわけですが、陽樹さんから見て、裕子さんはこの厳しい状況にどう対応していると思いますか?
「状況の変化に一喜一憂せず、冷静さを保ち、やるべきことをしっかりやっていると思います」
――東京五輪後について、夫婦で話し合うことはありますか?
「裕子の仕事次第ですが、どこの国に住んでも対応したいと考えています。日本へ帰った場合、僕は教員の仕事を続けるかもしれないし、別の仕事をするかもしれない。そのことも想定して、資格を取得する勉強を始めています」
先進的、理想的な家族のカタチの1つとして
清竹君は、父親譲りでフットボールが大好き。地元のフットサルチームで左ウイングとして活躍しており、「夢はプロサッカー選手」と言う。
お母さんに柔道も教えてもらっているが、本人は「サッカーの方が好き」。工作も大好きで、7歳の誕生プレゼントに電気ドリルを買ってもらい、木材で船などを作って喜んでいる。
麻椰ちゃんは、歌ったりピアノを弾くのが好きで、柔道とバレーも習っている。
地球の反対側に、日本人としてのアイデンティティをしっかり保ちながら、新型コロナウイルスの感染爆発という困難な状況下にあっても一人ひとりが伸び伸びと活動し、お互いを強く支え合っている幸福な一家がある。
彼らの話を聞いて、これは国、スポーツ、ジェンダーなどの境界や枠組みを軽々と飛び越えた先進的にして理想的な家族の1つのカタチなのではないかと感じた。
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