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【箱根駅伝・劇的逆転V】駒大・大八木監督&藤田敦史コーチが語った「簡単に負けないチーム」への取り組みとは
text by
小堀隆司Takashi Kohori
photograph byShigeki Yamamoto
posted2021/01/03 14:30
駒澤大学の藤田コーチと大八木監督
なぜ常勝チームであり続けられるのか?
――毎年選手が入れ替わるのが学生スポーツの宿命ですが、なぜ駒澤は何年も常勝チームでいられるのでしょうか?
大八木 トレーニングも少しずつ変えていますよ。今はとにかくスピードをつけないと勝負ができないので。スピードを身につけさせるために、練習の質も上げていってます。
藤田 (監督を)見ていてすごいなと思うのは、選手個々の性格や走り、さらには体調面まですべてを把握されているところ。必ず選手と一緒にグラウンドに出て、細かな仕草まで見てらっしゃいます。やはりこういう地道な取り組みを根気強く続けてきたからこそ、20年間もつねにトップを走り続けていられるんだと感じますね。
――藤田さんの学生時代を振り返って、監督の助言に救われた思い出はありますか。
藤田 私の場合は貧血でした。ちょうど私が入部したときに監督がコーチとして来られて、すぐに「貧血だから病院に行ってみろ」と声をかけられたんです。病院の先生には「よくこんな数値で長距離をやってますね」と呆れられました。それからは自分でもなぜ貧血になるのかを考えたり、監督の奥様が毎日寮で鉄分の多い食事を作って下さるようになって、劇的に症状は良くなったんです。あの頃は毎日レバーを食べてましたから、レバーが嫌いになりかけましたけど(笑)。
大八木 そうだった、そうだった(笑)。焼いたレバーばかりだと飽きるから、色んな料理に入れて。味を変えながら、山盛りのレバーを食べさせました。
――カラダ作りを考えると、毎日の食事は非常に大切な要素です。栄養面以外にも何か工夫されているところはありますか。
大八木 たとえば、走る距離によって選手の体重を意識的に増やすことはあります。トラック競技とハーフ、フル(マラソン)では必要なスタミナがまったく違ってくる。トラックだと最初からベストな体重でスピードに乗っていった方が良いけど、マラソンやハーフの場合は後半からグッと上げていかないといけない。ハーフ以上の距離を走るときに体を絞ったままの状態で走らせると後半にエネルギー切れを起こして動きが悪くなるケースが多いんです。だから、5000mや10000mといったトラックより距離の長い駅伝やハーフマラソンを走る場合は、体重を1から2㎏、体脂肪率は1から2%多めに設定しています。必要なエネルギー量が異なるから、体脂肪のエネルギーを有効活用できるカラダづくりを狙って、練習前やレース前にアミノ酸をとることを長年続けてますね。距離があるレースの時は、中間点あたりから徐々に体が軽くなっていくのが理想的な状態なんです。
藤田 極端な話、マラソンを1本走るとゴール後は平気で体重が3kgくらい落ちているんです。だから、ある程度距離が長くなれば落ちる分を見越して体重をスタート時に少し増やしておくと良い。体重が増えることがイコール悪いことではないですからね。500gから1kgくらい体重を増やしたときに自分の走りがどう変わるのか、普段の練習から自分で試して考えられる選手は強いです。