濃度・オブ・ザ・リングBACK NUMBER
【RIZIN】堀口恭司が濃密な“豪快KO”でチャンピオン朝倉海にリベンジ 「前回負けて、親が泣いていたんです」
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph byRIZIN FF Susumu Nagao
posted2021/01/01 17:06
堀口恭司はRIZIN大晦日大会でチャンピオン朝倉海を破り、ベルトを取り戻した
長時間の“読み合い”になるかと思われたが
彼が出したのはローキック。近年の“トレンド技”であるカーフキックだ。ヒザ下のカーフ、つまりふくらはぎの肉の薄い部分を狙う。これがヒットして海はバランスを崩した。
海もローを蹴り返すが空振りになった。身長は堀口165cm、海172cm。手足の長さも含め、攻撃の射程距離は海のほうが長いはずだ。なのにローキックを堀口だけが当てた。ステップワークを駆使することで、堀口が距離を支配したということだろう。
3発目のローでも崩れる海。5発目ではっきりとダメージが見て取れた。主導権を握った挑戦者は海の飛びヒザ蹴りに右パンチのカウンター。着地したところにも右を連打し、倒れた(足の踏ん張りが効かなくなったという)海にパウンドを落として試合を終わらせた。1ラウンド2分48秒のリベンジだった。
この試合が長時間の“読み合い”になると予測した者も少なくなかったのではないか。実は筆者がそうだった。お互い相手の動きを研究し、対策を練り、さらにその上に対策をぶつけてくる。隙を見せられないから手数も少なくなる。そんな想像だ。ところが実際には、1ラウンドの半分ほどの時間でレフェリーストップになった。
一つの要素がKOにつながった
前回の対戦、朝倉陣営は堀口が右のパンチを出す際に頭を左に傾けるクセを分析し、カウンターを見事にヒットさせている。今回の堀口はカウンターを警戒して、簡単にはパンチの距離に入ってこれないだろうと海は語っていた。
その読みは間違っていなかった。だが堀口が選んだ“入る”手段はローだった。それもありうると海は考えていたが、踏み込みの速さと思い切りのよさが予想以上だったという。相手が何をするか分かってきた頃には、前足の自由を奪われていた。
1戦目に“頭の傾き”で負けた堀口は“足への踏み込み”で勝負を制した。どちらの試合でも、一つの要素がKOにつながったことになる。組んでからの展開も用意していたという堀口だが「プランを変えた」そうだ。「海選手がカーフキックに気を取られていたので」。
実は海もテイクダウンがプランの中にあった。おそらく、お互いいくつもの作戦を準備していたのだろう。しかし序盤のローキックの攻防が、ありえた可能性すべてを消し去った。1戦目は68秒、2戦目は168秒。どちらも短時間の“豪快KO”だがとてつもなく濃密であり、その背景に膨大な量の思考と技巧が張り巡らされていた。
その結果として勝敗が入れ替わり、立場がまた変わった。堀口はベルトを取り戻した。それらすべてが、リマッチの醍醐味に感じられた。