濃度・オブ・ザ・リングBACK NUMBER
【RIZIN】堀口恭司が濃密な“豪快KO”でチャンピオン朝倉海にリベンジ 「前回負けて、親が泣いていたんです」
posted2021/01/01 17:06
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph by
RIZIN FF Susumu Nagao
2020年のベストバウトは、1年の最後の試合だった。RIZIN大晦日大会(さいたまスーパーアリーナ)のメインイベントである。
バンタム級タイトルマッチ、チャンピオンの朝倉海に対するは堀口恭司。1年4カ月、501日ぶりの再戦は立場を入れ替えて行なわれた。
2019年8月、挑む側だったのは海だ。堀口はRIZINとアメリカのメジャー団体ベラトール、2つのベルトを巻いていた。“不良格闘技”THE OUTSIDERで名を馳せた新鋭が偉大な王者にどこまで通用するか。そんな構図の試合は海が68秒でKO勝ち。格闘技史上最大級のアップセットだった。
もちろん再戦は必至。ベルトをかけてのリマッチにどちらも異存はなかった。だがその一戦は翌年、つまり2020年の大晦日まで持ち越される。堀口が右ヒザの負傷で長期欠場に入ったためだ。前十字靭帯断裂と半月板損傷。要手術、全治10カ月の診断だった。
堀口と再戦するはずだった1年前の大晦日、海はマネル・ケイプと空位になった王座を争い、KO負けを喫する。しかし敗戦によって、より隙がなくなったようにも思えた。ケイプも王座を返上し、8月にまたも王座決定戦。海は扇久保博正をKOしてついにベルトを巻いた。
チャレンジャー・堀口陣営は自信を隠さなかった
こうして、2020年大晦日のメインは海がチャンピオンとしてのタイトルマッチになった。海は堀口が欠場している間に4試合行なっている。コンスタントに試合をすることで得る経験値は大きい。まだ出していない“対堀口”の作戦もあった。
一方、チャレンジャーになった堀口には不安(と我々が考える)要素があった。負傷明け、長期欠場明けのぶっつけ本番でタイトルマッチ。試合勘は鈍らないのか。ヒザの状態を気にしてリングで思い切り動くことへの躊躇が生まれないか。またアメリカに練習拠点を置く堀口は試合のために帰国してから2週間の自主隔離期間を送った。試合に向けての最終調整期間が、いつもと違うペースになるわけだ。
だがそれは見る側の、一般的な格闘技の常識に即した不安でしかない。堀口陣営は自信を隠さなかった。すべて問題ないから試合を受けたのだと。それが正しかったことを、堀口はゴング直後のファーストコンタクトで証明している。