格闘技PRESSBACK NUMBER
那須川天心VS武尊、切り裂かれた“夢の黄金カード”が6月にも? 「格闘技界をひとつにするために」
posted2021/01/01 17:07
text by
布施鋼治Koji Fuse
photograph by
RIZIN FF Susumu Nagao
止まっていた時計の針が突然動いた。
『RIZIN.26』(12月31日・さいたまスーパーアリーナ)で行なわれた那須川天心VSクマンドーイ・ペットジャルーンウィット戦直前、リングサイドに武尊が現れた時、筆者はそう思わざるをえなかった。
その姿は会場のモニターにも映ったので、コロナによる入場規制で会場に設けられた席の半分を埋めた観客がどよめいたことはいうまでもない。直前に情報を耳にしていたのだろうか、リングインした時点で那須川はすでに武尊の存在に気づいていた。
「今まで見に来てくれたことはなかったのでうれしく思いました」
クマンドーイから判定勝ちを収めた那須川は引き上げる道すがら武尊のところで立ち止まり一言二言ながら話し合った。
「お疲れさまでしたみたいな感じで、ちょっと話をしたみたいな感じでしたね」
「大みそかで」「組まれたらいつでもやります」
那須川VS武尊は格闘技ファン、ひいてはキックボクシングファンが真っ先に“夢の対決”として挙げる黄金カードだ。
2015年11月21日には那須川がK-1の会場の花道で試合が終わって引き上げる武尊に「大みそかで(闘いましょう)」と対戦をアピールした。その直後には武尊も「組まれたらやります。組まれたらいつでもやります」と受けて立つ姿勢を見せていた。
2017年12月31日に、那須川が試合後「皆さん、誰と見たいですか?」と観客に問いかけると、「武尊!」という声があがった。しかし、この発言に対してK-1側は他団体の興行に対する不当な介入に当たるとして、那須川やRIZINを民事訴訟で訴えるという事態に。この一件があってから、夢の対決の機運はピタリと止まった。
その後、VS武尊について聞かれると、那須川は「ないんでしょう」と真っ向から否定していたほどだ。ふたりの「闘いたい」という純真な想いは格闘技界の複雑な大人の事情によってズタズタに切り裂かれたかのように見えた。