マスクの窓から野球を見ればBACK NUMBER
創価大ひと筋37年…“グラウンドもない”弱小校の監督になり、小川泰弘、石川柊太ら球界のエースを生み出した男
posted2020/12/22 17:00
text by
安倍昌彦Masahiko Abe
photograph by
Jiji Press
この秋、11月10日、横浜スタジアム。
秋の大学・高校の「全国大会」である明治神宮大会はコロナのために中止になったが、せめて「関東No.1」だけは決着をつけようと、関東の5つの大学リーグの優勝、準優勝合わせて10チームによる「関東地区大学野球選手権大会」が行われていた。
創価大学・岸雅司監督とは、もう15年ほどのお付き合いになる。
選手の取材から始まって、今から8年ほど前には拙著『監督と大学野球』にも登場してもらい、監督人生についてうかがった。
いつもの年なら、リーグ戦や八王子のグラウンドの練習に3回や4回はおじゃましているのだが、今年はこうした状況なので控えていた。
「まだ選手たちにも言ってないんだけど……」
シーズンも大詰めになって、ご挨拶だけでも……と、試合前のダグアウトをのぞこうとしたら、バックネット前で仁王立ち。岸監督、選手たちのアップの様子を眺めていた。
「おお、久しぶり!見たよ、この前、テレビで!」
にっこり笑って、ミットを構えるかっこをしてみせる。
福岡大大濠・山下舜平大(オリックス1位)、トヨタ自動車・栗林良吏(広島1位)…この秋、私が“とんでもないボール”を受けた映像がテレビで紹介されていた。
「まだ受けてるんだ、よく見えるねボール。僕なんか、キャッチボールだっておっかないよ」
「まーた、また」
ひとしきり、そんな話が続いたあたりで、岸監督の口ぶりがちょっと変わった。