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【UNIVASって何?】“スポーツ馬鹿”を生むな! 世界王者・村田諒太が大学運動部員に勧める「デュアルキャリア」とは
text by
二宮寿朗Toshio Ninomiya
photograph byGetty Images
posted2020/12/20 11:00
2019年7月12日、村田諒太はWBA世界ミドル級王者のロブ・ブラントと再戦し、2回2分34秒TKO勝ちで、9カ月振りに王座に返り咲いた
「デュアルキャリア」とは何か?
真っ先に目を向けたのが「学業充実・意識改革」におけるインフラ整備である。
UNIVASのオフィシャルサイトを開くと、取り組みの一番手に出てくるのが「デュアルキャリア」。デュアルとはすなわち「二重の」という意味だ。競技生活を財産にしてアスリート以外のキャリアも考えておく必要があるというメッセージに思える。
大学の運動部に所属する学生は将来、いや数年後の未来をどう描いているのか。競技でメシを食える人は限られる。とはいえ学生生活を競技ばかりに傾注する人は少なくない。
卒業を見据えて「就職セミナー」も用意
NCAAでは学業成績で一定の基準を超えないと対外試合に出場できないルールがあり、UNIVASも学業基準導入に向けて調査や検証などを実施している。
ただこれでは“押しつけ”になる可能性があり、自発的に学業に取り組んでもらわないと意味がない。そのために入学してスムーズに学業に入れるよう「入学前教育プログラム」をオンラインで提供したり、著名アスリートをゲストに招いたオンライン講座などの「デュアルキャリアプログラム」を展開したりしている。卒業を見据えて「就職セミナー」も用意する。
これらの施策の意図について、池田敦司UNIVAS専務理事に尋ねた。池田専務理事は東北楽天ゴールデンイーグルス副社長、ヴィッセル神戸社長を経て仙台大学教授を務めており、スポーツビジネスや大学スポーツ界に精通している。UNIVASの設立にも携わってきた人物である。
「(運動部の大学生は)特に私立大学だと推薦入学率が高く、去年の例だと秋口には大体決まります。そうなると高校最後の半年間、競技に専念したり、遊んだりして学業から離れてしまう。高校までは時間割があって“与えられるもの”でしたが、大学は卒業に必要な124単位を自分で選択していくパラダイムの転換があります。全体的に体育系学部が増えてきたとはいえ、一般の学生と一緒に学ぶとなるとついていけなくなる学生が多いんです。いいスタートを切れるように、勉強や心構えのサポートをしていきたい、と。入り口から出口までという考え方をベースに置いていて、入り口というところで入学の準備から始めています」